ボヘミアの海岸線

海外文学を読んで感想を書く

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『2666』ロベルト・ボラーニョ|これほどの無関心、これほどの暗黒

「警官とまぐわうのは山の中でその山とまぐわうようなもの、密売人とまぐわうのは砂漠の空気とまぐわうようなもの、ってこと?」 「まさにそうなの。密売人に抱かれると、いつも嵐のなかにいるみたい」 ーー ロベルト・ボラーニョ『2666』 年に1〜2回ほど、…

【海外文学アドベントカレンダー2020】エントリを紹介するよ

海外文学アドベントカレンダー2020を開催した。 今年に読んだ海外文学、読んでみたかった海外文学、復刊してほしい海外文学、読めそうにない海外文学、海外文学を読もうとしたらなにも読まずに終わりそう、海外文学を読める気がしない、今年の海外文学ベスト…

『マリーナの三十番目の恋』ウラジミール・ソローキン|真実の恋は怪物

愛なくして生きることは不可能だ、マリーナ! 不可能だ!! 不可能だ!!! ――ウラジミール・ソローキン『マリーナの三十番目の恋』 『マリーナの三十番目の恋』は、『ロマン』と同時代に書かれた小説だ。『ロマン』といえば、10年ぐらい前に読書会で「人類…

『地下 ある逃亡』トーマス・ベルンハルト|離れろ、離れろ、反対方向へ

休みになったら元気を回復する、とみんな思っているけれど、実は真空状態に置かれるのであって、その中で半ば気違いになる。それゆえみんな土曜の午後になると恐ろしく馬鹿げたことを思いつくのだが、すべてはいつも中途半端に終わるのだ。 ーートーマス・ベ…

『原因 一つの示唆』トーマス・ベルンハルト|美しき故郷への罵倒と情

世界的に有名なこれほどの美が、あれほど反人間的な気候風土と結びついているのは、致命的だ。そして、まさにこの場所、私が生まれついたこの死の土壌こそ、私の故郷なのであり、他の町や他の風景ではなく、この(死に至らしめる)町、この(死に至らしめる…

トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』未読読書会

この世には、3種類の読書会が存在する。 課題図書を読み終わった読書会、課題図書を読んでいる最中の読書会、課題図書を読んでいない読書会だ。 私がよく参加するのは読了後の読書会で、たまに読んでいる最中の読書会に参加する。実際には、読んでいる最中の…

【2020年】今年に読んでよかった&思い出深い海外文学3冊

小澤みゆきさん(@miyayuki777)主催の「文芸アドベントカレンダー」に登録して、なにを書こうかなーと考えながらぼんやり生きていたら、「今年に読んでよかった/印象深かった文芸作品を紹介する」とテーマが決められていたことに昨日、気がついた。 自分が…

サポートしたら選書リクエストできる企画(noteの代替としてcodoc+はてなブログを試す)

noteからの移行先を探している声をTwitterでよく見る中、「codoc(購読ウィジェットサービス)+ブログサービス」で、noteみたいな購読ができるらしいと聞いた。 人に勧めてみるからには、自分でまずやってみないといかんと思い、とりあえずなにか有料コンテ…

『本の雑誌』で「新刊めったくたガイド」を連載します

12月10日発売の『本の雑誌』2021年1月号から、書評コーナー「新刊めったくたガイド」で連載を始めます。いえーい。 「新刊めったくたガイド」は国内文学、海外文学、ミステリ、SF、ノンフィクションといったジャンルごとの担当者が、直近1~2か月に販売され…

『大都会の愛し方』パク・サンヨン|泣き笑いで軽く語る、軽くない愛

ーーじゃあ今日から僕のことメバルって呼んでください。 酔った俺は、たったいま俺何て言ったんだ、マジ終わってる、と思ってる途中に男がまたまじめな顔で答えた。 ーーいや、ヒラメって呼ぶつもりです。中身が丸見えだから。 ――パク・サンヨン『大都会の愛…

挫折した海外文学選手権

これまでたくさんの小説に挫折してきた。いったいどれほどの本を手に取り、本棚に戻したことだろう。 これは、私と、私と本棚を共有してきた妹による、とりわけ思い出深い「挫折した海外文学」の記録である。 この記事は、主催している「海外文学・ガイブン …