ボヘミアの海岸線

海外文学を読んで感想を書くブログ

▼オセアニア文学

『ラガ 見えない大陸への接近』ル・クレジオ|失われた島々の断片

ラガでは、人はつねに創造の時の近くにいる。 …堕罪や現在を、メラネシア人が本当は気にしていないということは、よく感じられる。かれらは、より幻想的なものとより現実主義的なものの、同時に両方でありうるのだ。 −−ル・クレジオ『ラガ 見えない大陸への…

『グールド魚類画帖』リチャード・フラナガン|流刑地で花開く、狂気の夢

膿んだ腫れ物に口づけした。潰瘍だらけの、膿がたまって腐りかけたくぼみだらけのやせ細ったすねを洗った。おれはその膿であり霊であり神であり、自分自身にすら解釈できず知ることができない存在だった。そのためにどれほど自分を憎んだことか。おれが愛し…

『セミ』ショーン・タン|雇われ人の心をえぐる社員ゼミ

しごと ない。 家ない。 お金 ない。 トゥク トゥク トゥク! ――ショーン・タン『セミ』 鮮やかだ。あらゆる意味で鮮やかな書物である。 夏だからセミの話をする。主人公はセミだ。大企業でまじめに働いている。だが、報われない。灰色のスーツを着て、灰色…

『奥のほそ道』リチャード・フラナガン| 生きながらに死に、死にながら生きる

見るのはつらい、だが見ずにいるのはもっとつらい。 ――リチャード・フラナガン『奥のほそ道』 生きて、死んで、そしてまた 突き詰めていけば私の関心ごとは、生と死とそれら不可避の事象をめぐる感情であるように思う。私の心をえぐり爪痕を残していく文学は…