2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧
今は嘘と欺瞞の時代です。ぼくは、存在か、それともイメージなのか。肉体か、それとも権威なのか。枯れた庭の石か、それとも動かぬ木ですか。言ってください。ぼくは何者なのか。 ――ターハル・ベン=ジェルーン『砂の子ども』 私の心にはおそらくずっと地平…
生のことだけ考えていたかった。でも、それはやさしいことではなかった ――マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』 これまでできていたことができなくなったり、話せたことが話せなくなったり、選べていたものが選べなくなったり、やらなくてよかったことをや…
告白しないのは、まだ私自身が、起こったことをこんなにも信じていないからだとも思う。私はまだ愕然としている。自分に真実を言い聞かせなおすたびに唖然とするのだから、なおさらだろう。だから私は手間を省くために回避する。私は自分がその言葉を言うと…
雨が降ると地面が凍えたように青くなる季節になった。わたしは冬に鍋をするのが好きだが、それ以上にアイスクリームを食べるのが好きだ。寒い冬にあえてもっと寒いことをするのが好きなのである。 というわけで、寒い土地の冬を描いた海外文学リストである。…
私としても、明快たるべき文献研究資料をねじ曲げ変形させて、怪物じみた小説もどきを拵えるつもりは毛頭ない。 ――ウラジミール・ナボコフ『淡い焔』 『Pale Fire(淡い焔)』という厳かな題名、「詩に注釈をつける男の物語」という生真面目なあらすじからは…