ボヘミアの海岸線

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スペイン文学

『パリに終わりはこない』エンリーケ・ビラ=マタス|自意識・イン・パリ

<<私くらいの年齢になれば、何とかして外見だけでもヘミングウェイに似ているとまわりの人に認めてもらいたくなりますよ>> ーーエンリーケビラ=マタス『パリに終わりはこない』 自意識・イン・パリ 私たち人類は、「褒められたい」「認められたい」と願う生…

『無声映画のシーン』フリオ・リャマサーレス

今では雪になっている母に。——フリオ・リャマサーレス『無声映画のシーン』 架空の写真 わたしにとってリャマサーレスは“追憶の作家”である。かつてリャマサーレスは、すべてを食らい尽くす時間と記憶の漂白を、廃村に降る『黄色い雨』に例えた。 記憶は、お…

『三大悲劇集 血の婚礼 他二篇』ガルシーア・ロルカ

おれたちにとって、身を焦がしながら口に出さないでいることほどひどい罰はありゃしない。……なんの役にも立ちゃしない! ただおれの体に炎をかき立てただけだ!——ガルシーア・ロルカ「血の婚礼」 血と情念 なんと情念的なのだろう。土と汗と血のにおいがする…

『ナボコフのドン・キホーテ講義』ウラジミール・ナボコフ

『ドン・キホーテ』はこれまで書かれた中で最高の小説だと呼ばれてきた。もちろん、これはナンセンスだ。事実は、世界中の最大傑作の一つでさえないのだ。——ウラジミール・ナボコフ『ナボコフのドン・キホーテ講義』 ナボコフの鉈 どこで読んだのだったか、…

『ジプシー歌集』フェデリコ・ガルシア・ロルカ

緑色わたしの好きな緑色。 ジプシーの月の下で 物みな娘を見つめているが、 娘にはそれらを見ることができない。 ――フェデリコ・ガルシア・ロルカ「夢遊病者のロマンセ」 緑の風よ ここ数日、強い風が桜の花びらをまきあげながら坂をかけおりるのを眺めてい…

『ドン・キホーテ 後篇』セルバンテス

[夢破れて] Miguel de Cervantes Saavedra Don Quijote de la Mancha,1615.ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)作者: セルバンテス,Miguel De Cervantes,牛島信明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/02/16メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブ…

『ドン・キホーテ 前篇』セルバンテス

[最も愉快で憂鬱な] Miguel de Cervantes Saavedra Don Quijote de la Mancha,1605.ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)作者: セルバンテス,Cervantes,牛島信明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/01/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 130回この商品…

『狼たちの月』フリオ・リャマサーレス

[逃走か死か] Julio Llamazares Luna De Lobos, 1985.狼たちの月作者: フリオリャマサーレス,Julio Llamazares,木村榮一出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (20件) を見る 「…

『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス|追憶と忘却の雨

[追憶と忘却の雨] Julio Llamazares La lluvia amarilla , 1988.黄色い雨作者:フリオ・リャマサーレス発売日: 2005/09/01メディア: 単行本 毎年秋になると必ずあの雨が降る。家々と墓石を埋め尽くす雨。人々を老いさせる雨。人の顔を、手紙や写真を少しず…

白水社版「スペイン・ラテンアメリカ作家 推薦図書リスト」

白水社発行の「エクス・リブリス通信」に掲載されていた、スペイン・ラテンアメリカ文学のおすすめ本リスト。 コメントは、ボラーニョ『通話』の翻訳者、松本健二さんのものを1部抜粋したり、適当につけたりしています。 物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大…