ボヘミアの海岸線

海外文学/世界文学/ガイブンの書評と感想ブログ。昔の名は「キリキリソテーにうってつけの日」

オーストラリア文学

『セミ』ショーン・タン|セミは悲しきサラリーマン

しごと ない。 家ない。 お金 ない。 トゥク トゥク トゥク! ――ショーン・タン『セミ』 鮮やかだ。あらゆる意味で鮮やかな書物である。 夏だからセミの話をする。主人公はセミだ。大企業でまじめに働いている。だが、報われない。灰色のスーツを着て、灰色…

第五回 日本翻訳大賞の最終選考5作品を読んだ

第五回 日本翻訳大賞に、ウィリアム・ギャディス『JR』(木原義彦訳)とジョゼ・ルイス・ペイショット『ガルヴェイアスの犬』(木下眞穂訳)が選ばれた。2作品の受賞、おめでとうございます。 JR 作者: ウィリアム・ギャディス,木原善彦 出版社/メーカー: 国…

『奥のほそ道』リチャード・フラナガン| 生きて、死んで、そしてまた

見るのはつらい、だが見ずにいるのはもっとつらい。 ――リチャード・フラナガン『奥のほそ道』 生きて、死んで、そしてまた 突き詰めていけば私の関心ごとは、生と死とそれら不可避の事象をめぐる感情であるように思う。私の心をえぐり爪痕を残していく文学は…