ボヘミアの海岸線

海外文学を読んで感想を書く

2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

明日、また明日、また明日と、時は小きざみな足取りで一日一日を歩み、ついには歴史の最後の一瞬にたどりつく、昨日という日はすべておろかな人間が塵と化す死への道を照らしてきた。 消えろ、消えろ、つかの間の燈火! 人生は歩き回る影法師、あわれな役者…

ウラジミール・ナボコフ『ディフェンス』

精神分析のにたずさわる医者や患者なら楽しんでいただけると思うのは、ルージンが神経衰弱になってから受ける治療の詳細であり(たとえばチェス選手は、自分のクイーンにママの、そして相手のキングにパパの面影を見るといった暗示療法)さらに鍵穴式携帯盤…

『ペインテッド・バード』イェジー・コシンスキ│この世という地獄めぐり

ぼくは神の御子を殺したことの償いのためにこんなにたくさんのユダヤ人の命がはたして必要なのだろうかと思った。この世界はやがて、ひとを焼くための、ひとつの大きな火葬場になるだろう。司祭さんだって、すべては滅び、「灰から灰に」帰する運命にあると…

『三大悲劇集 血の婚礼 他二篇』ガルシーア・ロルカ

おれたちにとって、身を焦がしながら口に出さないでいることほどひどい罰はありゃしない。……なんの役にも立ちゃしない! ただおれの体に炎をかき立てただけだ!——ガルシーア・ロルカ「血の婚礼」 血と情念 なんと情念的なのだろう。土と汗と血のにおいがする…

『ディフェンス』ウラジミール・ナボコフ

ぼんやりした感嘆の念とぼんやりした恐怖を覚えながら、なんと不気味に、なんとあざやかに、なんと柔軟に、一手一手、少年時代のイメージが反復されてきたか(田舎……学校……叔母)を彼は知り、それでもまだ、どうしてこの手筋の反復が魂にこれほどの恐怖を呼…