ボヘミアの海岸線

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ポーランド文学

『逃亡派』オルガ・トカルチュク│動け、進め、行くものに祝福あれ

「家、どこにあるか覚えてる?」 「覚えてるわ」アンヌシュカは言った。「クズネツカヤ通り四十六番地、七十八号室」 「それ、忘れなよ」 ーーオルガ・トカルチュク『逃亡派』 10代の頃からずっと、「逃亡」へのゆるやかなオブセッションを抱え続けている。 …

『昼の家、夜の家』オルガ・トカルチュク|われら人類は胞子のように流れる

ガイドブックには、食べられるものと、そうでないものとの違いが、事細かに書いてある。よいキノコと、悪いキノコ。キノコを、美しいか、醜いか、いいにおいがするか、くさいのか、手ざわりがいいか、悪いか、罪に導くキノコか、罪を赦すキノコか、そうやっ…

『メダリオン』ゾフィア・ナウコフスカ|人間が人間にこの運命を用意した

さまざまなところから死亡の知らせが届く。…人びとはあらゆる方法で死んでいく、ありとあらゆるやりかたで、どんなことも口実にして。もう誰も生きていないし、しがみつくもの、守り通すものはないように思えた。死はそれほどに偏在していた。−−ゾフィア・ナ…

『ペインテッド・バード』イェジー・コシンスキ│この世という地獄めぐり

ぼくは神の御子を殺したことの償いのためにこんなにたくさんのユダヤ人の命がはたして必要なのだろうかと思った。この世界はやがて、ひとを焼くための、ひとつの大きな火葬場になるだろう。司祭さんだって、すべては滅び、「灰から灰に」帰する運命にあると…

『サラゴサ手稿』ヤン・ポトツキ

[異形だらけの千夜一夜] Jan Potocki Manuscrit trouve a Saragosse,1804?世界幻想文学大系〈第19巻〉サラゴサ手稿 (1980年)作者: 荒俣宏,紀田順一郎,J.ポトツキ出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1980/09メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含む…

『黒檀』リシャルト・カプシチンスキ

[無限の多様性] Ryszard Kapuscinski HEBAN,1998.黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)作者:リシャルト・カプシチンスキ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/08/11メディア: 単行本 一流の人類学者は、<アフリカ文化>や<アフリカ宗教>…

『コスモス』ヴィルド・ゴンブロヴィッチ

[ベンベルグ] Witold Gombrowicz Kosmos,1965.コスモス―他 (東欧の文学)作者: ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ,工藤幸雄出版社/メーカー: 恒文社発売日: 1990/03メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 28回この商品を含むブログ (10件) を見る 「わしにいわせ…

『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ

[語られなかった戦争] Wislawa Szymborska Koniec i Poczatek,1993.終わりと始まり作者:ヴィスワヴァ・シンボルスカ出版社/メーカー: 未知谷発売日: 1997/06/01メディア: 単行本 終わりと始まり 戦争が終わるたびに 誰かが後片付けをしなければならない。 …

『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』ブルーノ・シュルツ

グロテスクなのに美しい Bruno Schulz Skeipy Cynamonowe,1934. Sanatorium pod klepsydra,1937.シュルツ全小説 (平凡社ライブラリー)作者: ブルーノシュルツ,Bruno Schulz,工藤幸雄出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2005/11/10メディア: 文庫購入: 3人 クリ…

『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム

[理解しあえなくとも]Stanisraw Lem SOLARIS ,1961.ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)作者: スタニスワフ・レム,飯田規和出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1977/04メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 377回この商品を含むブログ (152件) を見る …