ガイブン初心者にオススメする海外文学・文庫編
秋の夜長に「読みたい本の雰囲気を伝えてもらったら、それっぽい海外文学をおススメする」企画をTwitterでやってみた。
「あまり海外小説を読まないけれど興味はある」人たちからのリクエスト、「こういう雰囲気の本を求めている人がいる」という発見があって、とても楽しかった。
秋の夜長に海外文学バーテンダーでもやってみたらと言われたので。こういう雰囲気の本が読みたいとか、形容詞(ぐるぐるしている、真緑、冬っぽいなど)を2つ3つお伝えいただいたら、わかる範囲でそれっぽい海外文学を1冊紹介します。ご希望の方は #海外文学バーテンダー タグかリプライでどうぞ
— ふくろう (@0wl_man) 2014年11月5日
というわけで、海外文学/世界文学にほんのり興味があるけれど、あまり読んだことがない人たちに紹介できる「オススメの海外文学・文庫編」をつくってみた。ちょっとでも興味がある人たちがもっと増えてくれればうれしいし、出版社だって売り上げがあがれば良い作品をもりもり出してくれるにちがいない。ノーモア絶版。『夜みだ』はまだですか。
今回のリストは「早い・安い・うまい」で選んだ。
- すぐに手に入る、絶版でない
- 文庫本で安い
- 訳がわりと新しい、読みやすい
- 長すぎない
- 本ブログで☆405をつけた、わたしが好きな本
(たぶん)世界一かっこいい家の崩壊
黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集? ゴシック編 (新潮文庫)
- 作者: エドガー・アランポー,Edgar Allan Poe,巽孝之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03/28
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 51回
- この商品を含むブログ (43件) を見る
モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集? ミステリ編 (新潮文庫)
- 作者: エドガー・アランポー,Edgar Allan Poe,巽孝之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (36件) を見る
アメリカ文学。世界初のミステリと言われる「モルグ街の殺人」は「そのオチかよ!!」とつっこむところまでがお楽しみ。ぞくぞくする映像美でいえばダントツで「アッシャー家の崩壊」。ラストですばらしい崩壊ぶりとカタストロフィを味わえる。もはや意味がわかんないけどすっごく格好いい。表紙まんまの世界観なので、表紙が好きなら買って間違いない。
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆ ゴシック度:☆☆☆☆☆
冬の追憶
- 作者: スチュアート・ダイベック,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 55回
- この商品を含むブログ (59件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ 透明さ:☆☆☆☆
- 『シカゴ育ち』スチュアート・ダイベック - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
珈琲も供述もあの娘も、すべては鱒なのだ
- 作者: リチャードブローティガン,Richard Brautigan,藤本和子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/07/28
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 45回
- この商品を含むブログ (137件) を見る
- ストーリー性:☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ ユーモア:☆☆☆☆
- 『アメリカの鱒釣り』リチャード・ブローティガン - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
失って失って、最後に残るものは
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (71件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆ 明るさ:☆ サバイバル度:☆☆☆☆☆
- 『最後のものたちの国で』ポール・オースター - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
*母は狂信者
- 作者: ジャネットウィンターソン,岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2011/09/08
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆ 明るさ:☆☆ ママやばい度:☆☆☆☆
- 『オレンジだけが果物じゃない』ジャネット・ウィンターソン - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
「何者にもなれない」ぼくたちは
- 作者: ブッツァーティ,脇功
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (24件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ えぐる度:☆☆☆☆☆
- 『タタール人の砂漠』ディーノ・ブッツァーティ - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
書物の形をした蜃気楼
- 作者: イタロカルヴィーノ,Italo Calvino,米川良夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 55回
- この商品を含むブログ (100件) を見る
- ストーリー性:☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ 異国度:☆☆☆☆☆
影の中の一つの星
- 作者: サン=テグジュペリ,堀口大學
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1956/02/22
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 75回
- この商品を含むブログ (209件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ 情景の美しさ:☆☆☆☆☆
- 『夜間飛行』サン=テグジュペリ - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
僕らはかいぶつ
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 100人 クリック: 3,630回
- この商品を含むブログ (276件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆ 明るさ:☆ ラストの強烈さ:☆☆☆☆☆
ぼくの鼻がぼくより出世してる件
- 作者: ゴーゴリ,平井肇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/02/16
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (72件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆☆ 爆笑:☆☆☆☆
- 『外套・鼻』ゴーゴリ - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
黒歴史の扉をこじあける
- 作者: ドストエフスキー,江川卓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1970/01/01
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 65回
- この商品を含むブログ (152件) を見る
ロシア文学。「栄えある中二病」小説としてトップ陣営を走り続ける。誰もが持つ黒歴史の扉を哄笑してぶちあけてくるドストの手腕がすごすぎて、手が震える。とりあえずウォッカを飲むんだ。
- ストーリー性:☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆ 中二病:☆☆☆☆☆
- 『地下室の手記』ドストエフスキー - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
人生は意図せず始められてしまった実験旅行である
- 作者: フェルナンド・ペソア,澤田直
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/01/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
- ストーリー性:☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ Twitter度:☆☆☆☆
- 『不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
ぬくぬくスープ文学
- 作者: イサクディーネセン,Isak Dienesen,桝田啓介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1992/02/01
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆☆☆ 文学グルメ:☆☆☆☆☆
- 『バベットの晩餐会』イサク・ディネーセン - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
ぞっとするほど緻密な超絶技巧
- 作者: G.ガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,野谷文昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/11/28
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 95回
- この商品を含むブログ (221件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆ 超絶技巧:☆☆☆☆
- 『予告された殺人の記録』ガルシア・マルケス - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
渋滞小説のマスターピース
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)
- 作者: コルタサル,木村栄一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/07/16
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 83回
- この商品を含むブログ (62件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ 謎スタイリッシュ度:☆☆☆☆
- 『悪魔の涎、追い求める男 コルタサル短篇集』フリオ・コルタサル - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
死んでしまった君と食べるごはんは、やっぱりおいしかった
- 作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,鈴木昭裕
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 73回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
- ストーリー性:☆☆☆ 日本語の読みやすさ:☆☆☆ 明るさ:☆☆☆ 抒情:☆☆☆☆☆
- 『レクイエム』 アントニオ・タブッキ - ボヘミアの海岸線 - 海外文学の感想
※修正:すみません、こちらなんと絶版でした。この前、本屋で見つけたからふつうに売っているものだと思っていた。白水社さんに復刊祈願を送りましたので、皆さんぜひTwitterやメール経由でリクエストを送ってください。あと20通ぐらいあればいけるはず(適当)。
まとめ
リクエスト企画で多かったのは「美しい小説」「あたたかい小説」「夜のような小説」「水のような小説」「ワンダーランドを見せてくれる文学」。そうした人たちにオススメしたのがこれらの小説だった。「新潮文庫の100冊」に出てくるような、いわゆる「古典」「名作」と呼ばれるものがない。これらは「外した」というよりも「外れた」のだ。
そういえばわたしは「白水uブックス」シリーズから海外文学の世界へはいったのだった。新潮文庫はどれも古くさい感じがして、よくわからなかったから。なので今回の選書も、昔のわたしの記憶がたぶんにはいりこんでいる。
「ハードカバーどんとこい」「もっと強烈なのがほしい」という人は「個人ベスト」をどうぞ。いかれた小説やブラックユーモア小説、ぶんなぐられるような劇薬小説など、世界の珍品(でも傑作)を集めている。
個別リクエストは、魅惑のえさタイム以外ならだいたい大丈夫だと思うので、Twitter上でどうぞ。
これまでにつくった海外文学リスト
Recommend
頭の狂った友だちが書いている「3冊で広げる世界」シリーズ。
居眠書生さん(@caorenqi)が作った、岩波文庫に特化した良まとめ。
なつめさん(@natsume00)が作った「文庫で絶版ではないオススメ海外文学10冊」。