ボヘミアの海岸線

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2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2019年は休む年だった

2019年は、休む年だった。 ここ数年ほどなにかに取り憑かれていたらしく、人生にいろいろ詰めこみすぎて、動き続けていた。刺激的で楽しかったけれど、やはり無理がきていたのだろう。2018年12月にふつりとなにもしたくなくなった。メールを見るのに1か月か…

『フラナリー・オコナー全短篇』フラナリー・オコナー |目の中の丸太を叩き落とす、劇的な一瞬

「なにを言うの! 田舎の善人は地の塩です! それに、人間のやりかたは人それぞれなのよ。いろんな人がいて、それで世の中が動いてゆくんです。それが人生というものよ!」 「そのとおりですね。」 「でも、世の中には善人が少なすぎるんですよ!」 ーーフラ…

『重力の虹』トマス・ピンチョン|重力を切り裂いて、叫べロケット

この上昇は<重力>に知られるだろう。だがロケットのエンジンは、脱出を約束し、魂を軋らせる、深みからの燃焼の叫びだ。生贄は、落下に縛り付けられて履いても、脱出の約束に、予言に、のっとって昇っていく…… ーートマス・ピンチョン『重力の虹』 これま…

『アメリカ南部』ジェームス・M・バーダマン丨アメリカの内なる異郷

南部は奴隷制度に対する考え方にとどまらず、経済、農業政策、政治的展望などの点においても北部と意見を異にしていた。今日、奴隷制度は廃止され、政治風土も大きく変わり、メディアという媒体の発達を通じてアメリカの均質化は進む一方である。しかし、そ…