ボヘミアの海岸線

海外文学を読んで感想を書く

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『白檀の刑』莫言

[悲喜こもごも] 莫言 檀香刑 ,2001. 白檀の刑〈上〉作者: 莫言,吉田富夫出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2003/07メディア: 単行本 クリック: 34回この商品を含むブログ (20件) を見る 白檀の刑〈下〉作者: 莫言,吉田富夫出版社/メーカー: 中央公論新社…

『黄色い街』ベーツァ・カネッティ

まったく奇妙な界隈である、この黄色い街というところは。不具者や、夢遊病者や、狂人や、絶望した者や、人生に飽きあきした人間がひしめいている。——ベーツァ・カネッティ『黄色い街』 沈黙の激情 ベーツァ・カネッティは、ブルガリア生まれのノーベル賞作…

「ぶんぱく2011」にこっそり参加して、引用パビリオンを作る

2010年春に世界文学の祭典「ワールド文学カップ」で海外文学ファンのお祭り騒ぎを巻き起こしたピクウィック・クラブが、4月から「文学博覧会2011」、略して「ぶんぱく'11」を開催している。 例年どおり、249タイトルすべてに手書きポップをつけるという謎の…

モテる海外文学(ガイブン)女子力を磨くための4つの心得

元ネタ:モテる女子力を磨くための4つの心得 こんにちは、海外文学を乱読しているイリアス嬢です。私は町でいちばんの美女でも毛皮を着たヴィーナスでもありませんし悪徳の栄えですが、恋愛に関してはプロフェッショナル。今回は、モテる海外文学(ガイブン…

『聴く女』トーベ・ヤンソン

寒さと暗さに守られているほうが互いをやりすごしやすい。いまは立ちどまって春ですねと話しあう。そのうち寄ってよとわたしは言う。もとより本気ではない。――トーベ・ヤンソン「春について」 吐く息は白い 今年の冬は長かったように記憶している。冬が長け…

息も絶え絶えの圧倒的狂気|『眩暈』エリアス・カネッティ

これほどの大金と、これほどの少量の理性とくれば、襲われて奪われるのが関の山。 気狂いとはおのれのことしか考えぬ者の謂である。——エリアス・カネッティ『眩暈』 頭脳なき世界 圧倒的な狂気である。 「眩暈」などという、そんな控えめな言葉では、とうて…

『ボディ・アーティスト』ドン・デリーロ

計画を立てることで、時間を組織化する、自分が再び生きられるようになるまで。——ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』 放心と回復 時々、まっ白い部屋にひとり立ちつくしているような感覚に陥ることがある。心と体がうまくつながっていない状態、自身の…