『最後のものたちの国で』ポール・オースター
[手紙と約束、願いの先]
Paul Auster IN THE COUNTRY OF LAST THINGS , 1987.
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07
- メディア: 新書
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In the country of the Last things、最後のものたちの国。次がない。これでおしまい。 「最後のもの」というのは、「最後のものたちの国」とは、つまりはそういうことだと思う。 さっくりと言ってしまえば、絶望である。
主人公アンナ・ブルームが置かれている立場はまさにそれで、四面楚歌、360度矢面という情景描写がぴったり来るような地獄の中にいる。死をお金で買うことで日々の価値を高めようとする「自殺クラブ」、理不尽な通行料、ものを食べない人々…印象的な逸話が多い。そしていつだって、人は淡々と死んでいく。
それでも、訳者が言うように、この作品の根幹に流れているのは「希望」だと思う。 社会の中にあるさまざまな価値観を、削ってけずって極限までそぎ落としてシンプルにしたからこそ見える人間像を本作は描き出している。
物語はえんえんと続く静謐な悪夢のようだが、最後に一気に収束する。 最後の数行がとにかく秀逸。 この本が出版されたということ自体が、ひとつの願いの結果となっている。
アンナ・ブルームの約束が果たされることを、願ってやまない。
reccomend:
スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』 (柴田氏つながり。こちらもいい)
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』 (本読みにとって、悪夢の世界)
なんかの追記:
ポール・オースターの本はだいたい読んだけれど、その中でベストをあげるなら、これ。本読みの間では、オースターならこれが一番、という人は多いように思う。
アンチ・ユートピア=ディストピア小説は、あまり実は好きではないが、こればかりは別物。ちなみに、著名なディストピア小説といえば、
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』(焚書の世界)
ジョージ・オーウェル『1984年』(監視社会)
ウィリアム・ゴールディング『蝿の王』(孤島で子供が漂流教室)
個人的には、下に行くほど読むのがきつい。