ボヘミアの海岸線

海外文学/世界文学/ガイブンの書評と感想ブログ。昔の名は「キリキリソテーにうってつけの日」

海外文学・世界文学:個人ベスト

『夜になるまえに』レイナルド・アレナス

「覚えておくんだよ、わたしたちは言葉によってしか救われないってこと。書くんだ」——レイナルド・アレナス『夜になるまえに』 絶叫する生 夜とは、灯りが消えてものが書けなくなる時間であり、一度行ったらもう永遠に戻れない深淵のことである。キューバの…

『塩の像』レオポルド・ルゴーネス

というのも、これは疑いもなく、世にも稀な光景だからである。白熱した銅の雨! 炎に包まれる街! ——レオポルド・ルゴーネス『塩の像』 黙示録の光 先日の飲み会で、「バベルの図書館」の話が出たので、「バベルの図書館」シリーズについて書こうと思う。「…

『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ

波音は、たいていは控えめに心を和らげるリズムを奏で、夫人が子どもたちとすわっていると、「守ってあげるよ、支えてあげるよ」と自然の歌う古い子守唄のようにも響くのだが、また別の時、たとえば夫人が何かの仕事からふとわれにかえった時などは、そんな…

『響きと怒り』ウィリアム・フォークナー

[臓腑のような独白] William Cuthbert Faulkner The Sound and Fury,1929. 響きと怒り (上) (岩波文庫)作者: フォークナー,Faulkner,平石貴樹,新納卓也出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含む…

『アラン島』J.M.シング

石積みのてっぺんから見渡すとほとんどすべての方角に海原が見え、北と南には海の彼方に連なる山並みが見える。見下ろせば東の方に集落があり、家々のまわりで立ち働いている赤い人影が見える。ときどき、会話や島の古い歌のきれはしが風に吹きあげられて、…

『アイルランド・ストーリーズ』ウィリアム・トレヴァー

[ああ、アイルランド] William Trevor Irerand Stories.アイルランド・ストーリーズ作者: ウィリアム・トレヴァー,栩木伸明出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2010/08/27メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 42回この商品を含むブログ (21件) を見る その…

『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ|楽園という名の冥府

外に5日間いて、ぼくは生きることへの興味を失った。ある詩人が言っているよ。『生きる? 生きるだと? なんだ、それは? そんなことは召使にやらせておけ』って。ーーホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』 楽園という名の冥府 『夜のみだらな鳥』を読んでいる最…

『暗夜』残雪

「夜はもう明けるの?」ぼくは兄に聞いた。 「まだわからんのか。今は……今は……ああ、やめておこう」 (「暗夜」) 「夜が明けるなんてことを考えさえしなければ、この家と折り合えるさ。夜は明けっこないのだ」(「帰り道」) 夜は明けない 誤解を恐れずに言…

『黒檀』リシャルト・カプシチンスキ

[無限の多様性] Ryszard Kapuscinski HEBAN,1998.黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)作者:リシャルト・カプシチンスキ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/08/11メディア: 単行本 一流の人類学者は、<アフリカ文化>や<アフリカ宗教>…

『夜間飛行』サン=テグジュペリ

[影の中の一つの星] Antoine-Jean-Baptiste-Marie-Roger de Saint-Exupery Vol de Nuit,1931.夜間飛行 (新潮文庫)作者: サン=テグジュペリ,堀口大學出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1956/02/22メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 75回この商品を含むブログ (…

『島暮らしの記録』トーベ・ヤンソン

[静寂の日々] Tove Marika Jansson Anteckningar fran en o ,1993.島暮らしの記録作者: トーベ・ヤンソン,冨原眞弓出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1999/07/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 79回この商品を含むブログ (28件) を見る まあ、人間に…

『レクイエム』 アントニオ・タブッキ

[これもまた追憶] Antonio Tabucchi,Recuiem,1992.レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,鈴木昭裕出版社/メーカー: 白水社発売日: 1999/07/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 73回この商品を含むブログ (…

『白鯨』ハーマン・メルヴィル|世界は鯨でできている

あのゆるぎない塔、あれはエイハブだ。あの火山、あれもエイハブだ。あの雄々しい、不とう不屈の、かちどきの声をあげる雄鶏、あれもエイハブだ。何もかもがエイハブだ。 「おお、エイハブ!」スターバックがさけんだ。「いまからでも遅くはありません。ご覧…

『魔術師のたいこ』レーナ・ラウラヤイネン

[世界に歌あふれ] Leena Laulajainen Taikarumpu Kertoo,1980.魔術師のたいこ作者: レーナラウラヤイネン,Leena Laulajainen,荒牧和子出版社/メーカー: 春風社発売日: 2006/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 33回この商品を含むブログ (6件) を見る…

『ニーベルンゲンの歌』

[意味もなく皆殺し] Das Nibelungenlied,13c.ニーベルンゲンの歌〈前編〉 (岩波文庫)作者:出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1975/01/01メディア: 文庫ニーベルンゲンの歌〈後編〉 (岩波文庫)作者:出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1975/02/17メディア: 文…

『消去』トーマス・ベルンハルト|消してしまいたい、こんな思いは

私の頭に最終的に残っている唯一のものは、と私はガンベッティに言った、「消去」というタイトルだ。というのも私の報告は、そこに描写されたものを消去するために書かれるからだ。私がヴォルフスエックという名で理解しているすべて、ヴォルフスエックであ…

『不穏の書、断章』フェルナンド・ペソア

[自己という迷宮] Fernando Antonio Nogueira de Seabra Pessoa Bivro do desassossego.不穏の書、断章作者:フェルナンド ペソア出版社/メーカー: 思潮社発売日: 2000/10メディア: 単行本新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)作者:フェルナンド・ペソ…

『ブラッド・メリディアン』コーマック・マッカーシー|暴力と血が沸騰する狂信の荒野

[戦争がなければ人は土くれ] Cormac McCarthy Blood Meredian or the Evening Redness in the West,1985. ブラッド・メリディアン作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/12/18メディア: ハードカバー購入: 8人 クリ…

『ドン・キホーテ 後篇』セルバンテス

[夢破れて] Miguel de Cervantes Saavedra Don Quijote de la Mancha,1615.ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)作者: セルバンテス,Miguel De Cervantes,牛島信明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/02/16メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブ…

『ドン・キホーテ 前篇』セルバンテス

[最も愉快で憂鬱な] Miguel de Cervantes Saavedra Don Quijote de la Mancha,1605.ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)作者: セルバンテス,Cervantes,牛島信明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/01/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 130回この商品…

『一角獣・多角獣』シオドア・スタージョン

[奇妙な味わい] Theodore Sturgeon E Pluribus Unicorn,1953.一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,小笠原豊樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2005/11メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 70回この商品を含むブ…

『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム・フォークナー

[なぜ、なぜ、なぜ] William Cuthbert Faulkner Absalom, Absalom!,1936 アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)作者: ウィリアムフォークナー,篠田一士出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/07/11メディア: 単行本購入: 2人 …

『外套・鼻』ゴーゴリ

[あることはあり得る] Николай Васильевич ГогольНос,1836. Шинель,842.外套・鼻 (岩波文庫)作者: ゴーゴリ,平井肇出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/02/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (72件) を見る ……実際、不合理と…

『ハムレット』ウィリアム・シェイクスピア

[それが疑問だ] William Sharekspeare Hamlet,1602?ハムレット (白水Uブックス (23))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/10/01メディア: 新書購入: 7人 クリック: 74回この商品を含むブログ (19件) を見る ハ…

『コンゴ・ジャーニー』レドモンド・オハンロン

[なんだこれは] Redmond O'Hanlon Congo Journey,1996.コンゴ・ジャーニー〈上〉作者: レドモンドオハンロン,Redmond O'Hanlon,土屋政雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/04/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 56回この商品を含むブログ (23件) を…

『罪と罰』ドストエフスキー

[罪は意識] Фёдор Михайлович Достоевский,Преступление и наказание,1866.罪と罰〈上〉 (新潮文庫)作者: ドストエフスキー,工藤精一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1987/06/09メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 197回この商品を含むブログ (206件)…

『狼たちの月』フリオ・リャマサーレス

[逃走か死か] Julio Llamazares Luna De Lobos, 1985.狼たちの月作者: フリオリャマサーレス,Julio Llamazares,木村榮一出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (20件) を見る 「…

『から騒ぎ』ウィリアム・シェイクスピア

William Sharekspeare Much Ado About Nothing,1600.から騒ぎ (白水Uブックス (17))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/10/01メディア: 新書 クリック: 8回この商品を含むブログ (7件) を見る ベネディック…

『オセロー』ウィリアム・シェイクスピア

[時に嫉妬は愛より重く] William Sharekspeare Othello , 1602.オセロー (白水Uブックス (27))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/10/01メディア: 新書 クリック: 7回この商品を含むブログ (14件) を見る イア…

『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス

[追憶と忘却の雨] Julio Llamazares La lluvia amarilla , 1988.黄色い雨作者: フリオ・リャマサーレス,木村榮一出版社/メーカー: ウイーヴ発売日: 2005/09/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 42回この商品を含むブログ (10件) を見る 毎年秋になると…