キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

海外文学アワード2009

 2009年をまったりとふりかえる。さてさて2009年、何があったかな。

(1)大学院をどうにかこうにか卒業した
(2)夢ではなく、本当に仕事があった(これが一番の奇跡)
(3)活字にまみれた
(4)中南米ぶらり旅(もう1回行きたい)
 学生⇒社会人という、ジョブチェンジがやっぱり大きかった。(3)だけは、今年も変わらず。そして、これからもたぶん変わらないだろう。社会人になってからは、読書量はがつんと減ってしまったけど、その分原稿などのアウトプット量が増えた。「キリキリソテー」の傾向としては、2009年は昔読んだ本の感想文掘り起こしが多かったかもしれない。


■海外文学アワード2009

 では、今年読んだ本のアワード。 基本、1国1作品ノミネート(順不同)。基本的に今年感想を書いたものをピックアップ。⇒2008アワード


アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)


ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』
 アメリカ。血縁が煮えたぎる「南部」を幻視した驚異の世界。台風まっさかりの島で読んだせいか、吹き荒れる風と黄色い照明のイメージが強く残る。
フェアプレイ (トーベ・ヤンソン・コレクション)

フェアプレイ (トーベ・ヤンソン・コレクション)


トーベ・ヤンソン『フェアプレイ』
 フィンランド。女性芸術家2人の、気ままな生活。お互い対等な立ち位置で傍にいるという関係は理想。
砕かれた四月

砕かれた四月


イスマイル・カダレ『砕かれた四月』
 アルバニア。いまでも実在する「復讐の法」をモチーフにした、息のつまるような「死の宿命」。今年こそはカダレがノーベル文学賞をとるかと思ったのだが……とりあえず早く復刊してほしい1冊。
コンゴ・ジャーニー〈上〉

コンゴ・ジャーニー〈上〉


レドモンド・オハンロン『コンゴ・ジャーニー』
 イギリス。伝説の怪獣を探しに、全財産をかけてやってきた白人レドソ君の冒険。変身して森をかけぬけるピグミー族、占いと呪いが跋扈する政治など、アフリカン・マジックを地でいく世界観に瞠目。フィクションなのかノンフィクションなのかすらもよく分からない本。
黄色い雨

黄色い雨


フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』
 スペイン。誰もいなくなった村でたった1人、なつかしい日々を思い出しながら朽ちていく男の「記憶」。読んだ後に放心した。
アイヌ神謡集 (岩波文庫)

アイヌ神謡集 (岩波文庫)


『アイヌ神揺集』知里幸恵訳
 アイヌアイヌの神様は、鳥や熊の姿で人の前に現れて、さまざまな恵みをもたらす。豊かな世界にほれぼれする。


■海外文学アワード:2009年出版編
 2009年に出版・翻訳された海外文学限定アワード。今年は、岩波文庫のラインナップがグッジョブだった印象。白水社「エクス・リブリス」も当たりが多かった。

死者の軍隊の将軍 (東欧の想像力)

死者の軍隊の将軍 (東欧の想像力)


イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』
 アルバニア。生きながらにして死者の仲間入りをするほどの、壮絶な孤独。
創造者 (岩波文庫)

創造者 (岩波文庫)


ホルヘ・ルイス・ボルヘス『創造者』
 アルゼンチン。魔術師がかいま見せた、人と記憶への愛着。
青い野を歩く (エクス・リブリス)

青い野を歩く (エクス・リブリス)


クレア・キーガン『青い野を歩く』
 アイルランド。言えなかった思いと、粉々になった心を抱えて生きる人々。
黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)

黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)


ホフマン『黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ』
 ドイツ。「何がどうしてこうなった!」とつっこみたくなるほどのファンタジーぶりがすばらしい。緑色の蛇に恋した青年が、絶叫しながら愛をつらぬく。
ソングライン (series on the move)

ソングライン (series on the move)


ブルース・チャトウィン『ソングライン』
 イギリス。アボリジニたちの世界には、目に見えない道――ソングラインがある。紀行文学+文学+文化人類学を達成した稀有な一作。
フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上


アラン・ムーアフロム・ヘル [次点]
イギリス。「あのみすず書房が漫画を出した!」と一部読者に衝撃が走った(と思われる)作品。ロンドンの陰鬱とした雰囲気の描写が迫るせまる。
ブラッド・メリディアン

ブラッド・メリディアン


コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』 [次点]
 アメリカ。正直まだ読み終わっていないので、ここに掲載するのはどうかと思ったのだが、「これはすごいぞ」と直感が叫ぶためノミネート。アメリカ開拓時代、暴力と荒野の世界を生きた少年の物語。


■海外文学以外
 相変わらず、ざっくりすぎる区分で申し訳ない。思想、写真、漫画がごった煮。今年は、仕事関係の本に時間を割かなければならなかったため、日本人作家はあまり読まなかったなあ。

命題コレクション 哲学 (ちくま学芸文庫)

命題コレクション 哲学 (ちくま学芸文庫)


坂部恵加藤尚武編『命題コレクション 哲学』(思想)
 著名な哲学者が示した「命題」を52、数ページずつでまとめてある。哲学者ごとに紹介している本はたくさんあるけれど、「命題」という切り口がなかなかよい。コンパクトながらも重厚さがある1冊。

終の住処

終の住処


磯崎憲一郎『終の住処』(小説)
 今年の芥川賞受賞作。「マルケス的」といううたい文句にひかれて読んだ。人間の体感時間、あっという間に吹き抜ける時間間隔がよかった。どちらかというと、併録の「ペナント」の方が好み。
一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)


稲垣足穂一千一秒物語(小説)
 お月さまと殴り合いする小説。今年が「世界天文年」ということで、宮沢賢治とともに再読。昔はだんぜんケンジの方が好みだったけど、しばらくするうちに、タルホいいじゃないかと思うようになっていた。あたりまえかもしれないが、好みって変わるものなんだなあと。
Edgar Martins Topologies

Edgar Martins Topologies


Edgar Martins『Topology』(写真)
 自分クリスマスプレゼントで買った写真集。空港のばがーんと広くて何もないところが好きな人は必見。Webサイトもかわいい。

たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する

たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する


レナード・ムロディナウ『たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する』(ビジネス)
 確率論と、人間の思い込みについて。『競売ナンバー49の叫び』とあわせて読むとおもしろいかも。
ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)


徳永康元ブダペストの古本屋』(エッセイ)
 中欧・東欧研究家のエッセイ。趣味人のおじさん万歳。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)


森薫乙嫁語り(漫画)
 嫁がかわいすぎる。中央アジアの民族衣装への作者のこだわりがすごい。これをほぼ全部1人で描いているとか、なかなかありえないと思う(褒め言葉)。
宇宙兄弟(1) (モーニングKC)

宇宙兄弟(1) (モーニングKC)


小山宙哉『宇宙兄弟』(漫画)
 2009年は世界天文年。というわけで、宇宙漫画。この作家は、人物をすごく魅力的に描ける人なので好き。


 今年の初めに「シェイクスピア全集を充実させたい」と書いた。今年の感想は12本、3分の1。来年か再来年あたりにはコンプリートさせてみたい。
 今年は新刊チェックがメインになったので、来年は古本屋を活動拠点にして、本を読んでいきたいと思う。あと、「この海外文学がすごい!」も作れないかなあともくろみ中。