2009年をまったりとふりかえる。さてさて2009年、何があったかな。
(1)大学院をどうにかこうにか卒業した
(2)夢ではなく、本当に仕事があった(これが一番の奇跡)
(3)活字にまみれた
(4)中南米ぶらり旅(もう1回行きたい)
学生⇒社会人という、ジョブチェンジがやっぱり大きかった。(3)だけは、今年も変わらず。そして、これからもたぶん変わらないだろう。社会人になってからは、読書量はがつんと減ってしまったけど、その分原稿などのアウトプット量が増えた。「キリキリソテー」の傾向としては、2009年は昔読んだ本の感想文掘り起こしが多かったかもしれない。
■海外文学アワード2009
では、今年読んだ本のアワード。 基本、1国1作品ノミネート(順不同)。基本的に今年感想を書いたものをピックアップ。⇒2008アワード

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)
- 作者: ウィリアムフォークナー,篠田一士
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/07/11
- メディア: 単行本
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・ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』
アメリカ。血縁が煮えたぎる「南部」を幻視した驚異の世界。台風まっさかりの島で読んだせいか、吹き荒れる風と黄色い照明のイメージが強く残る。

- 作者: トーベヤンソン,Tove Jansson,冨原眞弓
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1997/12
- メディア: 単行本
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・トーベ・ヤンソン『フェアプレイ』
フィンランド。女性芸術家2人の、気ままな生活。お互い対等な立ち位置で傍にいるという関係は理想。

- 作者: イスマイルカダレ,Ismail KAdar´e,平岡敦
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 単行本
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・イスマイル・カダレ『砕かれた四月』
アルバニア。いまでも実在する「復讐の法」をモチーフにした、息のつまるような「死の宿命」。今年こそはカダレがノーベル文学賞をとるかと思ったのだが……とりあえず早く復刊してほしい1冊。

- 作者: レドモンドオハンロン,Redmond O’Hanlon,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/04
- メディア: 単行本
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・レドモンド・オハンロン『コンゴ・ジャーニー』
イギリス。伝説の怪獣を探しに、全財産をかけてやってきた白人レドソ君の冒険。変身して森をかけぬけるピグミー族、占いと呪いが跋扈する政治など、アフリカン・マジックを地でいく世界観に瞠目。フィクションなのかノンフィクションなのかすらもよく分からない本。

- 作者: フリオ・リャマサーレス,木村榮一
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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・フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』
スペイン。誰もいなくなった村でたった1人、なつかしい日々を思い出しながら朽ちていく男の「記憶」。読んだ後に放心した。

- 作者: 知里幸恵
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1978/08/16
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・『アイヌ神揺集』知里幸恵訳
アイヌ。アイヌの神様は、鳥や熊の姿で人の前に現れて、さまざまな恵みをもたらす。豊かな世界にほれぼれする。
■海外文学アワード:2009年出版編
2009年に出版・翻訳された海外文学限定アワード。今年は、岩波文庫のラインナップがグッジョブだった印象。白水社「エクス・リブリス」も当たりが多かった。

- 作者: イスマイルカダレ,Ismail Kadare,井浦伊知郎
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2009/10
- メディア: 単行本
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・イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』
アルバニア。生きながらにして死者の仲間入りをするほどの、壮絶な孤独。

- 作者: J.L.ボルヘス,Jorge Luis Borges,鼓直
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/06/16
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・ホルヘ・ルイス・ボルヘス『創造者』
アルゼンチン。魔術師がかいま見せた、人と記憶への愛着。

- 作者: クレアキーガン,Claire Keegan,岩本正恵
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2009/12
- メディア: 単行本
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・クレア・キーガン『青い野を歩く』
アイルランド。言えなかった思いと、粉々になった心を抱えて生きる人々。

黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)
- 作者: エルンスト・テオドール・アマデウスホフマン,Ernst Theodor Amadeus Hoffmann,大島かおり
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: 文庫
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・ホフマン『黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ』
ドイツ。「何がどうしてこうなった!」とつっこみたくなるほどのファンタジーぶりがすばらしい。緑色の蛇に恋した青年が、絶叫しながら愛をつらぬく。

- 作者: ブルース・チャトウィン,Bruce Chatwin,北田絵里子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2009/02/27
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・ブルース・チャトウィン『ソングライン』
イギリス。アボリジニたちの世界には、目に見えない道――ソングラインがある。紀行文学+文学+文化人類学を達成した稀有な一作。
・アラン・ムーア『フロム・ヘル』 [次点]
イギリス。「あのみすず書房が漫画を出した!」と一部読者に衝撃が走った(と思われる)作品。ロンドンの陰鬱とした雰囲気の描写が迫るせまる。

- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/12/18
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・コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』 [次点]
アメリカ。正直まだ読み終わっていないので、ここに掲載するのはどうかと思ったのだが、「これはすごいぞ」と直感が叫ぶためノミネート。アメリカ開拓時代、暴力と荒野の世界を生きた少年の物語。
■海外文学以外
相変わらず、ざっくりすぎる区分で申し訳ない。思想、写真、漫画がごった煮。今年は、仕事関係の本に時間を割かなければならなかったため、日本人作家はあまり読まなかったなあ。

- 作者: 坂部恵,加藤尚武
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/10
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・坂部恵/加藤尚武編『命題コレクション 哲学』(思想)
著名な哲学者が示した「命題」を52、数ページずつでまとめてある。哲学者ごとに紹介している本はたくさんあるけれど、「命題」という切り口がなかなかよい。コンパクトながらも重厚さがある1冊。

- 作者: 磯崎憲一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/07/24
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・磯崎憲一郎『終の住処』(小説)
今年の芥川賞受賞作。「マルケス的」といううたい文句にひかれて読んだ。人間の体感時間、あっという間に吹き抜ける時間間隔がよかった。どちらかというと、併録の「ペナント」の方が好み。

- 作者: 稲垣足穂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1969/12/29
- メディア: 文庫
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・稲垣足穂『一千一秒物語』(小説)
お月さまと殴り合いする小説。今年が「世界天文年」ということで、宮沢賢治とともに再読。昔はだんぜんケンジの方が好みだったけど、しばらくするうちに、タルホいいじゃないかと思うようになっていた。あたりまえかもしれないが、好みって変わるものなんだなあと。

- 作者: John Beardsley,Edgar Martins,David Campany
- 出版社/メーカー: Aperture
- 発売日: 2008/04
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・Edgar Martins『Topology』(写真)
自分クリスマスプレゼントで買った写真集。空港のばがーんと広くて何もないところが好きな人は必見。Webサイトもかわいい。

- 作者: レナード・ムロディナウ,田中三彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/09/17
- メディア: 単行本
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・レナード・ムロディナウ『たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する』(ビジネス)
確率論と、人間の思い込みについて。『競売ナンバー49の叫び』とあわせて読むとおもしろいかも。

- 作者: 徳永康元
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
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・徳永康元『ブダペストの古本屋』(エッセイ)
中欧・東欧研究家のエッセイ。趣味人のおじさん万歳。

- 作者: 森薫
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2009/10/15
- メディア: コミック
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・森薫『乙嫁語り』(漫画)
嫁がかわいすぎる。中央アジアの民族衣装への作者のこだわりがすごい。これをほぼ全部1人で描いているとか、なかなかありえないと思う(褒め言葉)。

- 作者: 小山宙哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/21
- メディア: ペーパーバック
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・小山宙哉『宇宙兄弟』(漫画)
2009年は世界天文年。というわけで、宇宙漫画。この作家は、人物をすごく魅力的に描ける人なので好き。
今年の初めに「シェイクスピア全集を充実させたい」と書いた。今年の感想は12本、3分の1。来年か再来年あたりにはコンプリートさせてみたい。
今年は新刊チェックがメインになったので、来年は古本屋を活動拠点にして、本を読んでいきたいと思う。あと、「この海外文学がすごい!」も作れないかなあともくろみ中。