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『嵐が丘』エミリー・ブロンテ

[激情の嵐]
Emily Jane Brontë Wuthering Heights , 1847.

嵐が丘 (新潮文庫)

嵐が丘 (新潮文庫)


 すごい兄弟姉妹というのが世界にはいる。文学史上のすごい姉妹といえば、やはりブロンテ3姉妹だろう。ブロンテ3姉妹(シャーロット、エミリー、アン)は、ヨークシャーの牧師の娘として生まれた。3人が3人とも歴史に名を残す作品を書いたという、じつに驚異的な姉妹。その中でも、次女エミリーの書いた『嵐が丘』は、彼女の没後に評価がぐんぐんと上がった不思議な作品だ。


 本書は、はじめは男性名で出版されたらしいが、この物語は女性が強烈な空想力で描き出した物語であると読みすすめるたびに思う。舞台は「嵐が丘」「鶫の辻」というふたつの屋敷のある荒涼とした土地だ。この閉じられた舞台の上で、ふたりの主人公キャサリンとヒースクリフは、恋とも愛とも執着ともいえるじつに野性的な感情をさらけ出して、生きて、死んでいく。

 物語の中にも本物の幽霊は出てくるが、登場人物がどうにも幽霊くさい。 何かに取りついたような極端な性格の人物像、ふたつの丘だけという行動範囲の狭さ、荒地という舞台、よく死んで入れ替わる登場人物が、こんな印象を与えている。

 みんな、それぞれに性格が悪くて、人間的。 悪、愛、どちらにせよそれは執着で、全員がそれぞれに命がけなのは、見ていてすごいと素直に思う。 恋愛小説かと言われれば、「どうだろう……」という感じではある。あまりにヒースクリフの性格があれすぎて、ヒーローとしては失格だ。

 「嵐が丘」は、イギリスの都会の話でも美しい田園の田舎の話でもなく、ブリテン島のケルト的伝統に基づいた、閉じたワンダーワールドの物語であるように思う。それにしても、やっぱりイギリスは幽霊が好きなのだなあと思った。ちなみに本書、訳の問題かどうかは知らないが、みんな妙に口が悪い。

 人間のある一部分を特化して、そのままにさらけ出したこのぶちまけっぷり。Wuthering Heightsはざわついている。


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