ボヘミアの海岸線

海外文学/世界文学/ガイブンの書評と感想ブログ。昔の名は「キリキリソテーにうってつけの日」

『賢い血』フラナリー・オコナー

[清潔であることの生きにくさ]
Flannery O`Connor WISE BLOOD , 1952.

賢い血 (ちくま文庫)

賢い血 (ちくま文庫)

「祈るな、それは嘘だ」


 39歳で不治の病で逝去する、アメリカ女性作家による、いかれたコメディ。「祈るな。それは嘘だ。」という帯の一文があまりに印象的だったために手に取った。 神はいるかいないか、救いはあるのかという宗教的な問題がテーマの物語だ。

 「キリストのいない教会」を説いてまわる主人公ヘイズは、言動ともにかなりクレイジーな人間だ。自家製の宗教をあがめ、あちこちで布教する。いわゆる「新興宗教」みたいなものだが、これがさまざまな矛盾をはらむ代物で、じつに薄っぺらい。

 金銭目的なら、嘘をついても良心はこれっぽっちも痛まない。しかし主人公ヘイズは金銭目的ではなく、これが正しいと思い込んでいる。嘘がつけない、徹底的に不器用で純粋な人間。 そんな主人公は、やがて自分の矛盾に気づいて、迷い、転落していく。


 一見、カルト宗教じみたキテいる人間だらけのやばい小説に見える。 しかし、テーマはあくまで「神への姿勢」という、宗教的に普遍なものだと思う。
「神などいない」と嘆くそのことこそが、すでに神への祈りであり、純粋でまじめに向き合おうとする人こそ、世界と神、自分の「かみ合わなさ」に絶望する。

また、これはあくまでコミック小説であるらしい。 ゴリラの衣装をまとって踊る青年やミイラを大事にする少女など、なかなかシュールな場面があっておもしろい。キリスト教は馴染みが深いので楽しく読んだ。

 


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