『賢い血』フラナリー・オコナー
[清潔であることの生きにくさ]
Flannery O`Connor WISE BLOOD , 1952.
- 作者: フラナリーオコナー,Flannery O'connor,須山静夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/05
- メディア: 文庫
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「祈るな、それは嘘だ」
39歳で不治の病で逝去する、アメリカ女性作家による、いかれたコメディ。「祈るな。それは嘘だ。」という帯の一文があまりに印象的だったために手に取った。 神はいるかいないか、救いはあるのかという宗教的な問題がテーマの物語だ。
「キリストのいない教会」を説いてまわる主人公ヘイズは、言動ともにかなりクレイジーな人間だ。自家製の宗教をあがめ、あちこちで布教する。いわゆる「新興宗教」みたいなものだが、これがさまざまな矛盾をはらむ代物で、じつに薄っぺらい。
金銭目的なら、嘘をついても良心はこれっぽっちも痛まない。しかし主人公ヘイズは金銭目的ではなく、これが正しいと思い込んでいる。嘘がつけない、徹底的に不器用で純粋な人間。 そんな主人公は、やがて自分の矛盾に気づいて、迷い、転落していく。
一見、カルト宗教じみたキテいる人間だらけのやばい小説に見える。 しかし、テーマはあくまで「神への姿勢」という、宗教的に普遍なものだと思う。
「神などいない」と嘆くそのことこそが、すでに神への祈りであり、純粋でまじめに向き合おうとする人こそ、世界と神、自分の「かみ合わなさ」に絶望する。
また、これはあくまでコミック小説であるらしい。 ゴリラの衣装をまとって踊る青年やミイラを大事にする少女など、なかなかシュールな場面があっておもしろい。キリスト教は馴染みが深いので楽しく読んだ。
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