『伝奇集』ボルヘス
[無限、円環、迷宮]
Jorge Luis Borges FICCIONES ,1944.
- 作者: J.L.ボルヘス,鼓直
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/11/16
- メディア: 文庫
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わたしの読書歴の中で、ボルヘスはひとつのマイルストーンだった。「ボルヘス以前」と「ボルヘス以後」で、世界の読み方が変わった。初めて読んだのは高校生の頃で、「世界の魔法が書いてある」と、図書館の隅で静かに衝撃を受けた記憶がある。今も昔も、敬意と愛着をこめて読み返す一冊。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「アル・ムターシムを求めて」:
架空の書物に対するレビュー。むしろこの本が読みたい。
「円環の廃墟」:
人は誰かが想像した夢に過ぎないのではないか?おそらく誰もが一度は考えたことのある仮説。めぐりめぐり、円環は廻る。
「バビロニアのくじ」:
偶然に満ちた世界について。神はさいころ遊びをするか?論理学的な話。
「バベルの図書館」:
宇宙に対する、文学的仮説。想像すると目がくらんでくる。「図書館は無限であり周期的である」。(本文より)
「八岐の園」:
チェスタトン的な、哲学&探偵小説的な物語。分岐する未来が平行して、敵は味方に、味方は敵に。
「記憶の人、フネス」:
すべてを記憶する、忘れることができない男の話。サヴァン症候群の人は、こんな感じらしいけれど。
「裏切り者と英雄のテーマ」:
「歴史が文学を模倣するということは考えられないが・・・」(本文より)ある男の暗殺が、まるでシェイクスピアを模倣している?短いけれどおもしろい。
「死とコンパス」:
罠にかかった探偵と死と。死すらも円環の中に。ぐーるぐる。
「南部」:
現実と夢を一気に切り替えてくるのは、ラテンアメリカ文学のすごいところだと思う。ルルフォしかり、コルタサルしかり。コルタサルの「正午の島」と似ている雰囲気(ボルヘスの方がお師匠なんですが)。
世界や宇宙の秘密を、こっそりのぞくような、それでいて何も分からないような。
recommend:
ボルヘス「砂の本」 (無限について)
チェスタトン「木曜日だった男」 (ボルヘスはチェスタトン好きだったらしい)
フリオ・コルタサル「悪魔の涎・追い求める男」 (ボルヘスの弟子)