『変身』フランツ・カフカ
[なにかが、ずれている]
Franz Kafka DIE VERWANDLUNG , 1915.
- 作者: フランツ・カフカ,Franz Kafka,高橋義孝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/07/28
- メディア: 文庫
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ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。
あまりにも有名な書き出しの小説。主人公は、自分が虫になっていることよりも、目覚ましの時間が過ぎていたところに仰天する。なにかが、徹底的にずれている。そんな思いが、読んでいる間中、抜けることがない。
大真面目に読んでもよし、ユーモアだと笑って読むもよし。カフカは、本当によく役人なんかやっていたなとつくづく思う。
カフカは、この作品が出版される際に、「表紙に毒虫の絵は描かないでくれ」と注文したらしい。 「毒虫」は、あくまで「疎外される者」であって、虫かどうかはどうでもいい。いつの時代、どの場所にも「毒虫」はいる。
社会的に疎外される者と、彼らを身内に抱える家族。 「家族だから」と庇護する気持ちと「邪魔だ」と疎んじる気持ちは、矛盾しているように見えるけど、きっとどちらも本心なのだろうと思う。
最後、グレーゴルがいなくなった後、リセットされたかのように晴れ晴れとした気持ちで、娘の将来に期待をよせるザムザ一家。 その未来には、「毒虫」の存在は欠片も残っていない。
この話は説明はなく、オチもない。 しかしだからこそ、その丸投げっぷりと残酷さは妙に現実的に思えてならない。
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