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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『神統記』ヘシオドス

ギリシャ・ラテン文学 ☆☆☆ 神話・民話

[神々います宇宙]
Hesiod Theogonia, B.C.7?

神統記 (岩波文庫 赤 107-1)

神統記 (岩波文庫 赤 107-1)

 ギリシアの神々の系譜を描いた、ギリシア神話の「原典」と呼ばれる詩。原初のカオスから、ゼウスが治める秩序の世界まで。
 まず原初にカオスがあり、そこからガイア(大地)、タルタロス(奈落)、エロスが生まれる。天と地が同時に生まれないで、そこになぜかエロスが入っているのが不思議。ウラノス(天)は、大地の子供として生まれてくる。
 そこからどんどこと神様が生まれてくるわけだが、愛の営みがあって生まれてくる神もいれば、営みなしにぽーんと生まれる神もいる。そうした生まれが神の性格に直結しているので面白い。
 世界はどんどん広がって豊かになるが、同時に覇権争いが生まれてくる。「父よりも強い子供が生まれる」運命を恐れ、父神が子供をいじめて、結局子供に復讐されるのが3代続くわけだが、そもそもこの「父よりも強い子が生まれる」という運命の設定がすごい。確実に後世になればなるほど、力関係が複雑化していくわけだ。ウラノスとクロノス、クロノスとゼウスの戦いに、必ず母なるガイアが1枚かんでいるのが、妙にリアル。
 複雑化した権力争いの決壊点が、ゼウスによる原初の神々=ティタン族の追放。本書の見どころである。「夜」とか「天」とか、世界を構成する根源的な神を追放していいのだろうか。ギリシア神話と日本神話は似ている部分もあるけれど、日本神話はこういうど派手な権力関係の逆転は起きない。つくづくギリシア神話はアグレッシブだと思う。
 そして世界は大きい。

というのも 大地から 曖々たるタルタロスまではそれほど遠く隔たっているのだ。
すなわち 青銅の鉄床が天から 九日九夜も落ち続けてやっと十日目に大地に届くだろうから。
大地から曖々たるタルタロスまでは また同じほど隔たっているのだ。

 10日かかる距離ってどれくらいだろう。でも、少なくともわたしたちが知っているものよりも、世界はずっとずっと広大だったのだよね。


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