『セールスマンの死』アーサー・ミラー
[夢破れて袋小路]
Arthur Miller Death of a Salesman , 1949.
アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)
- 作者: アーサー・ミラー,倉橋健
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09/20
- メディア: 文庫
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「この家じゃ、本当の話は十分と続かないんだ!」
世界大戦が終結したアメリカで生まれた、現代社会に追いつめられる戯曲。文字どおり、セールスマンが死ぬ話。
主人公のウィリーは、セールスマンだが、35年も勤めて利益をあげられない外回りをしている。ローンはたまっているし、息子どもは30代の働き盛りなのに、いまだに親のすねをかじっている(現代的だ。あまりにも)。こんな悲惨な状況にあって、ウィリーは、自分はみんなに愛されるすばらしいセールスマンだと思い込む。そうではないことを知っているけれど、強烈な意思で思い込む。さらには、息子たちに過大な期待をかけて、英雄に仕立て上げて、いつかはすばらしい仕事を成し遂げると言い続けるしかし現実は容赦がない。迫りくる現実の厳しさは、幻想では補いきれなくなって…。
これは一体どこの現代日本の話だ? と思うような、あまりに突き刺さる会話にびっくりしてしまった。自分のアメリカン・ドリームと、子供たちへのアメリカン・ドリームの継承。この「アメリカン・ドリーム」を「プレジデント・ファミリー」と「やればできるけどやらないだけ」に置き換えれば、今の日本の話としてつうじる。
そういえば、以前『ライ麦畑でつかまえて』で引用した、「いったいいつになったら大人になるんだ?」というセリフが同じだったので、ちょっと驚いた。
「夢を見続けるのは子供のすることだ、現実を見ろ、そんなに甘くはないぞ」という、今も昔も変わらない警告。成功した人はいい。夢を見ない人はいい。現実を知って方向修正できる人はいい。そうできない人間はどうすれば? やはり行く末はこうなってしまうんだろうか。うーむ、えぐられる。
ミラーと同時代の劇作家には、テネシー・ウィリアムズがいる。ちなみにどちらもピュリツァー賞を受賞。同時代に優れた劇作家が二人も出て、しかも二人とも、夢が壊れる世界を描いているのは、示唆的だ。『ガラスの動物園』の方が叙情的には美しいが、インパクトはこちらかな。
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