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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『人間ぎらい』モリエール

フランス文学 ☆☆☆

[みんな嫌いだ!]
MolièreLe Misanthrope ou l'Atrabilaire amoureux、1666.

人間ぎらい (新潮文庫)

人間ぎらい (新潮文庫)

 17世紀のフランス劇作家による、性格喜劇。

 主人公アルセストは、潔癖でおべっかが大嫌いで、正直を美徳とし、正義は勝つと思っている、自称「人間ぎらい」の青年貴族である。他の人間は見下すけれど、自分には目をつぶるという、若い頃によくある過剰な自己意識が、戯画化されていて、なかなか見ていて笑える(そして時々ぎくりとする)。アルセストは、おそらく現実にいたら、かなりイライラすると思われる人間なはずだが、彼の性格のせいで引き起こされる悲劇(裁判に負けたり、失恋したり)とあいまって、からりと明るい笑いを誘う。

 というか、アルセストは人間ぎらいではないだろう。恋だってするし、なんだかんだと見捨てないでかまってくれる友人がいる。特に友人フィラントが、いい人すぎる。彼に恋している女性だっているし、ずいぶん恵まれている。山に隠遁しますとか突然言ってしまうあたりも、悲劇ぶる若造さがよく出ていて、なんかどの時代でも国でも、若者はあまり変わらないなあと思う。

 とはいえ、お国柄が出るなと思ったのは、恋の熱情を語るシーン。「頭では分かっているけど、どうにもならない!」とすがるとか、不平不満をぶちあげながら愛の言葉を語るとかのあたりは、現代日本ではなかなか味わえない場面である。訳文の古めかしさもおもしろかった。「打っちゃっといてくれたまえ」なんて言い回し、久しぶりに見た。最後の台詞まで、明るく笑わせてくれる作品。


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