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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『やし酒飲み』エイモス・チュツオーラ

[アフリカン・マジック]
Amos Tutuola THE PALM-WINE DRINKARD, 1946.

やし酒飲み (晶文社クラシックス)

やし酒飲み (晶文社クラシックス)


 ナイジェリアの作家によって描かれる、アフリカ伝承の集大成。やし酒を飲むしか能のない男が、死んでしまったやし酒造りを探しに、死者の国に旅立っていく。

 死者、神様やら骸骨やら変な動物やら、ふしぎな登場人物と世界観。博物館にあるアフリカ美術が、息吹を持って動きだしたような、そんなおもしろさがある。

 主人公が、やし酒を飲むしか能がない、という、この潔さがすごい。

 裕福だから、専属の酒造りを抱えて、酒を飲む一生を過ごしてしまうことができる。それでいいんだ、というところに、素朴に驚いた。


 ひとつの物語ではなく、これまでのアフリカに伝わるいくつもの物語によって、この本は成り立っている。くるくると場面が入れ替わって、物語の筋もねじ曲がって。理路整然としたプロットなんてものはないけれど、別になくてもいいんだなあと思う。

 日本で言うなら、遠野物語や日本神話をつなげてひとつの本にした、というところだろうか。古来の伝承は、どこの国でも似ているというのはおもしろい。なにか、人間の共通言語的なものがあるのかもしれない。


 本書は英語で書かれて、ロンドンで出版された。西欧圏では絶賛されたのだが、本国ナイジェリアでは、「拙い英語を使って、アフリカの原始っぷりを見せるなんて、恥だ」なんて批判もあったらしい。

 西欧の影響がないアフリカを、西欧人は求める。底にある身勝手さは認める。だけど自分たちの持つ伝承を、「原始的で劣っている」と、アフリカ人自身が評定するのも悲しい。

 神話や伝承は、どこの国でも似たようなものを持っている。この本のおもしろさは、土地と時代を越えて、異国の読者の手元にやってきたということなんだと思う。

 酒は人類には不可欠だ。


関連リンク:

 都内でナイジェリア料理を発見。やし酒も置いてあるようです。⇒African restaurant&bar Esogie

 こちらは、アフリカ美術館。HPがかわいい。⇒The Museum of African Art(英語)


recommend:
アイザック・ディネーセン「アフリカの日々」
レーモン・ルーセル「アフリカの印象」 (西欧目線のアフリカ)
柳田國男「遠野物語」 (民間伝承)
古事記」「日本書紀」 (日本神話)