キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『自負と偏見』オースティン

[完成されたありきたりの物語]
Jane Austen PRIDE AND PREJUDICE ,1813.

自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)

 イギリス文学の傑作のひとつに数えられる恋愛喜劇。

 イギリスの田舎町で繰り広げられる、格好よくてお金持ちの男性と才気あふれる女性のロマンスと勘違い、ドタバタ、そして最後は大団円のハッピーエンド。 プロット自体はありきたりすぎるほどありきたりなのに、それでも先へ先へと読み進めたくなる不思議な物語。

 登場人物はいかにも人間くさい。 みんな欠点を持っていて、それが会話や思考の中にはっきりと書き出される。 人は、どんなに冷静なつもりでも偏見でものを見ているし、自分に対しては虚栄心がつきまとう。 えらそうにしている人ほど、そんなものでガチガチになってしまっている。 そんな人々を作者は皮肉に笑うが、それがからりと明るくて嫌味がない。 彼女のすばらしい人間観察力に「ううむ」と感心してしまう。

 特に主人公エリザベスのあのはっきりした性格は、なかなか見ていて痛快。 文学作品を読んでいてめずらしく、友達になってみたいと思った人物である。

"It is truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune must be in want of a wife."
「独身で財産がたっぷりある男性なら、きっと妻を欲しがっているはずだというのは、世の中で広く認められている真理である」

 「田舎の村の三軒か四軒の家族、それさえあれば小説が書けるのです」とジェイン・オースティンは述べたという。彼女はまさに有限実行だったといえる。

 完成されたありきたりの物語は、小手先のトリックを使わずとも、何世紀も後の読者を楽しませることができるのだなあ。


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