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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『さくらんぼの性は』ジャネット・ウィンターソン

[時は一方通行ではなく]
Jeanette Winterson SEXING THE CHERRY ,1989.

さくらんぼの性は (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

さくらんぼの性は (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

もしもわたしに魂とか霊魂とか呼ばれるものがあるとするならば、きっとそれは一つではなく複数であるのに違いない。
それは限定された大きさ(dimention)を持たず、次元(dimention)を越えた存在だろう。
そして過去と未来の無数の朽ちていく肉体に次々と移り住み続けているのだ。


 イギリスの作家による、奇想天外、マジカルな物語。いくつもの時代を越えた物語の断片の中を、のんびりと泳ぐような小説。あらすじを語るのがむずかしく、また実際、語ることはそれほど必要だとも思わない。

 主人公とその母Dog Woman「犬女」は、いろいろな時代に同時に存在して、そしていつも冒険をして、自分の心にすなおに生きている。時間の感覚をなくした小説だから、時間の流れが一方通行な展開はしない。ぐるぐるとめぐって、回って、その感覚がとてもおもしろい。
 はっとするようなフレーズが多かったのも、この小説の特徴。あと、「犬女」のキャラクターが濃くて豪快で、すてきすぎる。男性からしたら、やってられないだろうけど。うんちくも含蓄もなく、それでいておもしろい。

時間は人の心の中にだけ流れるものだから、一晩で二万年が過ぎ去ることも不可能ではない。

 時間ってなんだろう、と、読み終わったあとにぼんやりと考えた。

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