キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

ウラジミール・ナボコフ『ディフェンス』

 精神分析のにたずさわる医者や患者なら楽しんでいただけると思うのは、ルージンが神経衰弱になってから受ける治療の詳細であり(たとえばチェス選手は、自分のクイーンにママの、そして相手のキングにパパの面影を見るといった暗示療法)さらに鍵穴式携帯盤をこの小説を解く鍵だと誤解するフロイト派の小僧は、漫画的にとらえた私の両親や、恋人や、一連の私自身と登場人物たちを同一視することをきっとやめないだろう。

 そうした探偵諸君のためを思って告白しておくと、私がルージンに与えたのは私のフランス人女家庭教師と、私の携帯用チェスセット、私の優しい気質、それに我が家の壁に囲まれた庭で私がもぎ取った桃の種であった。(「まえがき」)

 

――ウラジミール・ナボコフ若島正訳『ディフェンス』1999、2008.