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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

アルバニア、血の報復、イスマイル・カダレの世界

 ドキュメンタリー写真を発信するプロジェクト、「G-PHOTO」が更新を終了した。いつも楽しみにしていただけに惜しい。今まで素敵な写真をありがとう。


 「G-PHOTO」は、「アルバニアのカヌン」についての調べものがきっかけで知った。イスマイル・カダレ『砕かれた四月』は、厳格な掟によって血の復讐が定められている2家族の物語である。家族を殺された者は、必ず相手の一族の誰かを殺さなくてはならない。殺人の連鎖は、どちらかの一族が滅亡するまで止まらない。
 『砕かれた四月』あとがきでは、血の掟(カヌン)は空想のしくみと説明されている。しかし、カヌンは現実に存在する。21世紀になった今もまだ、血は流れ続けている。



 なぜあとがきでこんな間違いが起きたかといえば、「訳者がアルバニア事情を知らないから」という一言に尽きるだろう。『砕かれた四月』はフランス語版からの重訳である。つまり、訳者はあくまでフランス語が専門で、アルバニアについて造形が深いわけではなかった。
 事実誤認が堂々と行われるのは問題だ。しかし、アルバニアのカヌンには「まさか現実の話ではあるまい」と思ってしまうぐらいの非日常性があるのも確かだ。そう、まるで悪い冗談のような。



 カダレ作品は最近『死者の軍隊の将軍』が訳出された。いっそのことカダレがノーベル文学賞をとれば、絶版書籍が一気に復刊されるだろうに。村上氏はまあ置いておいて、とりあえずカダレが受賞しないだろうか。いや、わりと本気でそう思っているのだけれど。


砕かれた四月

砕かれた四月