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『1984年』ジョージ・オーウェル

[絶望の世界]
George Orwell 1984 , 1949.

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

「戦争は平和である 自由は屈従である 無知は力である」


 「オーウェル的世界」という言い回しがある。新聞や研究書で、監視社会や情報統制を批判する時に「すべての人間の情報をストックする……オーウェル的世界が現実となる」といった表現を目にした。こういう使われ方は正直あまり好きではないが、それだけ本書が与えたインパクトは強いということだ。『華氏451度』『すばらしい新世界』に並んで、三大ディストピア小説に数えられる。

 1984年。3つの超大国によって世界は分断された。そのひとつオセアニアは、偉大な兄弟<ビッグ・ブラザー>によって、すべて監視されている世界。

 「戦争は平和である 自由は屈従である 無知は力である」というスローガン、二重思考<ダブル・シンク>、真理省、新語法<ニュー・スピーク>など、世界観が強烈である。オーウェルは徹底したアンチ共産主義、アンチ全体主義だったから、彼の描くディストピアは、冷戦時代の西側諸国に、熱狂的に迎え入れられた。

 世界を牛耳るには、パニックと情報と教育を押さえればいい、ということがよく分かる。浦沢直樹20世紀少年』でも、「ともだち」は同じことをやっているし。

 最初から最後まで救いがない。「絶望」とは1%の望みも断ち切られることだ。普通は、そこまで絶望することは滅多にない。だけど、本書はまさしく「絶望」的だ。なんといっても、最後の一文が、もっとも絶望的なのだから。


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