『神を見た犬』ディーノ・ブッツァーティ
[不安と恐怖の種]
Dino Buzzati IL COLOMBRE E ALTRI RACCONTI , 1966.
- 作者: ディーノブッツァーティ,関口英子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/04/12
- メディア: 文庫
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イタリアの幻想作家による短編集。
ブッツァーティが描くのは、「種」みたいなものだ。ごくごく小さなものなのだけど、それが一度地面に落ちれば、いろいろなものを吸収して成長していく。日常の不安や恐怖も、同じようなものなのだろう。つとめて平和に見えるけれど、小さなことをきっかけとして、じわじわと広がっていく。以下、印象的だったものの一言感想。
「コロンブレ」:
恐怖のあまりに、人生を棒にふってしまう男の話。もはやすべては遅すぎた。あーあ
「戦の歌」:
運命は、歌の中に。ブッツァーティらしい茫漠とした雰囲気が出ている。
「七階」
日常の「まあいいか」という惰性の怖さ。オチは見えているのに、進まざるをえない。妙な引力。
「神を見た犬」:
一匹の犬の存在で、村の因習が根こそぎ変わる。見られることへの恐怖と、外聞。けっこう日本でもありそうな話。
きわめて現実的なことを、ちっとも現実的でない世界観で語る。茫漠として、不安な世界と物語は、足元に寄せては返す波のように、じわりと忍んでさらりと引いていく。長篇「タタール人の砂漠」の方が、雰囲気はじっくり味わえるかも。
ブッツァーティの著作レビュー:
『タタール人の砂漠』
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