『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド
山々はわれらをわかち、茫漠たる海はわれらを隔てる――それでもなお血は強し、心はハイランド。 ――アリステア・マクラウド『彼方なる歌に耳を澄ませよ』
血は水よりも濃い
スコットランド人に会ったら、まず言われること。イングランドとスコットランドを絶対に言いまちがえてはいけない。料理がまずいのはイングランドであって、スコットランドを一緒にしないでほしい。ハギスとウィスキーとバグパイプは最高だ。そして、イングランドとスコットランドを絶対に言いまちがえてはいけない。
日本人にとって「英国」という国はロンドンやイングランドのイメージとつながりがちだが、ブリテン島の北半分はスコットランドが占めている。スコットランドは英国連邦内にとどまりながらほぼ独立国家であり*1、そのアイデンティティと誇り高さは上記の言葉にも現れている。
海を数千キロも隔てたカナダのケープ・ブレトン島に住むアリステア・マクラウドの祖先は、こういう土地から来た人々だった。6代たってもなお、彼らはゲール語で話し、ゲール語の歌を歌い、バグパイプのCDを鳴らし、フィドルを弾きウィスキーをかっくらいながら踊る。それでもなお血は強し、心はハイランド。これは、血と塩と氷でできた一族の物語である。
- 作者: アリステア・マクラウド,中野恵津子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/02/26
- メディア: 単行本
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*1:2014年は独立投票で世界中の注目を集めた。