ボヘミアの海岸線

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『顔のない軍隊』エベリオ・ロセーロ

 「気をつけたほうがいいわ、先生。村が誰の支配下にあるのか、いまだに不明なんだから」
 「誰の支配下だろうと、別に変わりゃしないさ」

——エベリオ・ロセーロ『顔のない軍隊』

この世の煉獄

 少々、ぶっそうな想像をしてみよう。例えば、つるつる顔ののっぺらぼうが機関銃を向けてきたとしたらどんな心持ちがするだろう、とか。なぜ自分を撃とうとしているのかがわからない、そいつが誰かも知らない。殺す理由がないからこそ、殺さない理由だってない。そんなオバケどもに囲まれたら? ……理由のない悪意は、理由のある悪意よりもおそらくずっと恐ろしい。

顔のない軍隊

顔のない軍隊

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