ボヘミアの海岸線

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『移民たち』W.G.ゼーバルト

 ――彼らはこうやって還ってくるのだ、死者たちは。——W.G.ゼーバルト『移民たち』

死者の記憶

 低くささやくような声で、4人の移民たちの人生が語られる。ドクター・ヘンリー・セルウィン、パウル・ベライター、アンブロース・アーデルヴァルト、マックス・アウラッハ。彼らひとりずつにスポットをあてて、なぜ移民となったか、これまで何をしてきたかを解き明かしていく。

 移民たちは、みんなすでに死んでいる。まるで暗い穴の奥へと吸いこまれるようにするりと、彼らはこの世を去った。ある者は銃口で頭を吹き飛ばし、ある者は線路にその身を横たえて。

移民たち (ゼーバルト・コレクション)

移民たち (ゼーバルト・コレクション)

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