ボヘミアの海岸線

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『ワインズバーグ・オハイオ』シャーウッド・アンダソン

自分以外のものの声が、人生には限界がある、とささやきかけてくる。自分自身と自分の将来について自信に溢れていたのが、あまり自信のない状態に変る。もしそれが想像力ゆたかな青年ならば、一つの扉が無理矢理こじあけられ、生まれてはじめて眼にする世界の姿が見えてくる。  シャーウッド・アンダソン『ワインズバーグ・オハイオ』

自意識の箱庭

人間は、見たい自分像を見る。有能な自分、愛され尊敬される自分、社会的名誉を得る自分、異性を惹きつける魅力を持つ自分、凡庸な人たちとは異なる“変わっている自分”を切望する。

だけど現実はだいたいその理想とは違っていて、わたしたちは英雄でも姫君でもないという現実が目の前に立ちはだかる。諦めて現実を受け入れる人たちもいれば、理想のために邁進する人もいるし、目の中に丸太を入れて自分の見たい幻想をこそ「真実」と呼ぶ人たちもいる。シャーウッド・アンダソンは、彼らにとって真実を求める「グロテスクな人たち」の自意識と生態を、架空の田舎町ワインズバーグに書きこんだ。

ワインズバーグ、オハイオ (新潮文庫)

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ワインズバーグ・オハイオ (講談社文芸文庫)

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