『ナギーブ・マフフーズ短編集』ナギーブ・マフフーズ
Naguib Mahfouz نجيب محفوظ ,Zaabalawi,Al-qahwa al-khaliya,Qabl al-rahil, Al-hawi kjatafa al-tabaq, Ahl al-qima,1962-1979.
[エジプトの生活]
- 作者: ナギーブマフフーズ,Naguib Mahfouz,塙治夫
- 出版社/メーカー: 近代文芸社
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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エジプトの国民的作家マフフーズの短編集。マフフーズは、アラビア語圏初のノーベル文学賞を受賞している。
全体的に描かれているのは、エジプトの庶民的な生活。結婚、老後、幼年時代のおつかいなどなど。小説形式は、どことなく西欧っぽいクラシックな雰囲気だが、「アッラーのご加護がありますように」なんて言葉が、会話の随所に見えるあたりはやはりアラビア圏。
「ザアバラーウィー」:
難病におかされた人が、賢者ザアバラーウィーをさがして、さまよう話。まあお約束のとおり、彼に会うことはままならない。
「空っぽのカフェ」:
90歳の老人が、気づくと周りに知っている人、愛している人がいなくなっていた、と嘆く話。どんなにカフェに人がいたとしても、カフェは空っぽ。
「旅立ちの朝」:
旅立つ前に、行きずりの女性とのひと時のロマンス。苦い後味。男のうぬぼれっぷりがなまなましくて痛い。
「手品師が皿をさらった」:
豆を買いに行くんだけど、金と皿を失う話。子供時代に、庇護の下から突然世界に一人放り出される。なんとなく、芥川龍之介「トロッコ」を思い出した。この作品集の中では一番好き。
「頂上の人々」:
結婚にまつわる、娘と父とすりの話。わりと明るい。エジプトでも、やはり持参金と仕事が問題になるらしい。
マフフーズ作品では、最近翻訳された『渡り鳥と秋』も良いらしいので、読んでみたい。ピラミッドもスフィンクスもない、エジプトの生活を読む。
recommend:
アラブ、イスラム圏をモチーフにした本。
オルハン・パムク『雪』……トルコ。ノーベル賞。アラブではないけれど、イスラム世界。
ロレンス・ダレル『アレクサンドリア四重奏』……西欧人が書くエジプト。風景描写が美しい。
山形孝夫『砂漠の修道院』……エジプトで発展したキリスト教、コプト教の教会のエッセイ。
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