ボヘミアの海岸線

海外文学を読んで感想を書く

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『チャイルド・オブ・ゴッド』コーマック・マッカーシー|孤立と貧困で転落する神の子

蝙蝠の群れが去ったあとは煙出しの穴から見える冷たい星の大集団を眺めてあれらの星は何でできているのか、自分は何でできているのかと考えた。 コーマック・マッカーシー『チャイルド・オブ・ゴッド』 「なぜつらい小説を読むのか、つらい話が好きなのか」…

『血と暴力の国』コーマック・マッカーシー|出会ってしまったら終わりの災厄

出直しなんてできないんだ。そういう話だよ。きみのどの一歩も永遠に残る。消してしまうことはできない。どの一歩もだ。言ってることわかるかい? ーーコーマック・マッカーシー『血と暴力の国』 『悪の法則』と『血と暴力の国』は異なる手法で同じマッカー…

『悪の法則』コーマック・マッカーシー|処刑器具として動き出す世界

自覚しておいてほしいのはあんたの運命はもう固まってるってことだ。 ーーコーマック・マッカーシー『悪の法則』 たとえば国境をわたる時、私たちはたいてい、自分の歩く道は自由に行き戻りできる双方向の道で、ちょっと冒険に出てもすぐに戻ってこられると…

『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー|愛に満ちた理想の家族という幻影

「度しがたい道徳家なんだなあ、きみは」 ――アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』 人間は自分が見たいように世界を見るし、自分が見たいように他者を見る。自分に似たところを見つけたり、自分がなりたい姿を見出せば、他者を好きになるし、自分にある…

『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー 』シモーヌ・ヴェイユ|不幸の底へ下り、愛へ飛躍する

わたしたちが生きており、その微小な部分をなしているこの宇宙は、神の<愛>によって神と神とのあいだに置かれたこの距離である。わたしたちはこの距離における一点である。時間・空間、物質を支配しているメカニズムは、この距離である。わたしたちが悪と…