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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

モテる海外文学(ガイブン)女子力を磨くための4つの心得

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元ネタ:モテる女子力を磨くための4つの心得


 こんにちは、海外文学を乱読しているイリアス嬢です。私は町でいちばんの美女でも毛皮を着たヴィーナスでもありませんし悪徳の栄えですが、恋愛に関してはプロフェッショナル。今回は、モテる海外文学(ガイブン)女子力を磨くための4つの心得を、皆さんにお教えしたいと思います。

1. あえて2〜3世代前の翻訳ものを飲み会に持っていく

 あえて2〜3世代前の翻訳で海外文学を読むようにしましょう。そして飲み会の場で好みの男がいたら話しかけ、わざとらしくページをめくってみましょう。そして「あ〜ん! この『ファウスト』本当にマジでチョームカつくんですけどぉぉお〜!」と言って、男に「どうしたの?」と言わせましょう。言わせたらもう大成功。「新訳とか詳しくなくてぇ〜! ずっと森鴎外訳を読んでるんですけどぉ〜! 旧かな遣いとか読みにくいんですぅ〜! ぷんぷくり〜ん(怒)」と言いましょう。だいたいの男は新訳・口語訳を「誤訳」とけなしつつも「新しいものに目をとおしておかないと批判もできないしな」と言いたがる習性があるので、古かったとしても高橋義孝訳は読んでいるはずです。

 そこで男が「新訳された海外文学は読まないの?」と言ってくるはず(言ってこない文盲の男はその時点でガン無視OK)。そう言われたらあなたは「なんかなんかぁ〜! 最近、柴田元幸の新訳が人気なんでしょー!? 『重力の虹』ってどうなんですかぁ? 新しいのが読みたいんですけどわかんなぁぁああい!! 私かわいそーなコ☆」と返します。すると男は「ピンチョンでしょ? 『重力の虹』はまだ新訳では出てないし、訳者は佐藤良明だよ。本当によくわからないみたいだね。どんな訳が読みたいの?」という話になって、次の休みの日にふたりで書店めぐりに行けるというわけです。あなたの女子力が高ければ、男が初版帯付き、月報揃えの未読美品を買ってくれるかも!?

2. 読書SNSでタイトルを無駄に引用するとモテる

 「闇の奥にひきずりこまれそう」とか「夜の果てへの旅に私も行ってしまいたい」などと、海外文学のタイトルをアンニュイな感じでフレーズ化して読書SNSのコメントに入れると、男性のガイブン読みは「なんかこの子は儚い文学少女だなぁ」や「この本あげたいかも」と思ってくれます。インターネット上では現実世界よりもイメージが増幅されて相手に伝わるので タイトルを使ったフレーズを多用することによって、男性はあなたを可憐で内気な文学少女と勘違いしてくれるのです。そういうキャラクターにするとほぼ絶対に『閉ざされた城の中で語る英吉利人』などの感想を気ままに書けなくなりますが気にしないようにしましょう。

3. とりあえず文学青年には「えー! なにそれ!?  知りたい知りたーい♪」と言っておく

 読書会などで、文学青年が女性に話すことといえば、日本語としての可読性や「まずは原文読め」といった話ばかり。よって、女性にとってどうでもいい話ばかりです。でもそこで適当に「へぇーボルヘスだって『ルバイヤート』はフェツジェラルド訳で読んでますよ〜?」とか「頼むから静かにしてくれ」と返してしまうと、さすがの男も「この女は原文主義者アンチだな」と気がついてしまいます。快楽主義の読書家だとバレたら終わりです。そこは無意味にテンションをあげて、「えー! なにそれ!?  知りたい知りたーい♪」と言っておくのが正解。たとえ興味がない話題でも、テンションと積極性で会合が終わるまで乗り切りましょう。積極的に話を聞いてくれる女性に男は弱いのです。

 いろいろと話を聞いたあと、「『レクイエム』はポルトガル語執筆で、『島とクジラと女をめぐる断片』がイタリア語執筆なんですね! 覚えたぞぉ! メモメモ!」とコメントすればパーフェクト。続けて両腕を上下させて空を切る動作をしつつ「アチャスアチャス! アチャスアチャス!」と言って、「どうしたの?」と男に言わせるのもアリ。そこで「私の脳に斧で記憶を刻みつけているのでありますっ☆」と言えば女子力アップ! そこでまた男は「この子、可愛い女かも!?」と思ってくれます。私はロリータでもタイタンの妖女でもありませんし脂肪の塊ですが、こういうテクニックを使えば知識がない私のような女のほうがモテたりするのです。男は優越感に浸りたいですからね。

4. ブックオフでは海外文学を買えない女をアピールせよ

 男とブックオフに入ったら、真っ先に海外文学のハードカバー棚を目指して「あーん! 私これ読めないんですよねぇ〜(悲)」と言いましょう。するとほぼ100パーセント「どうして? 古本は嫌いなの?」と聞かれるので、「嫌いじゃないし読みたいけど読めないんですっ><」と返答しましょう。ここでまた100パーセント「嫌いじゃないのにどうして読めないの?」と聞かれるので、うつむいて3〜5秒ほど間をおいてからボソッとこう言います。「……だって、……だって、ブックオフで買ったらハードカバーがますます重版できないじゃないですかぁっ! 零細出版社かわいそうですぅ! まだ訳者に翻訳料も支払えていないのにぃぃ〜(悲)。新しい翻訳権すら買えないんですよ……」と身を震わせて言うのです。

 その瞬間、あなたの女子力がアップします。きっと男は「なんて優しいベアトリーチェのようなコなんだろう! 絶対にゲットしてやるぞ! コイツは俺のバベルの図書館だ!」と心のなかで誓い、あなたに惚れ込むはずです。意中の男と付き合うことになったら、そんなことは忘れて好きなだけ100円棚でハードカバーを買いあさって大丈夫です。「読めないんじゃなかったっけ?」と言われたら「二重思考(ダブルシンク)になった」とか「あとは沈黙」と言っておけばOKです。

(文=海外文学ハンター・イリアス嬢)

便乗してみた感想

 脳みそが溶けるかと思いました。

書籍リスト

 むしろこっちが本編。

 基本的に、文庫などでお手軽に入手できるものばかりを集めました(ピンチョン全小説の『重力の虹』は2011年9月刊行予定)。モテるかどうかは当ブログの関知するところではございません。あしからず。

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

 世界最古の物語と呼ばれる、ギリシア叙事詩。けっこう皆がおれさま発言多くて笑える。→感想
町でいちばんの美女 (新潮文庫)

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

 表紙とタイトルのギャップがすごいよ賞で毎年1位。
毛皮を着たヴィーナス (河出文庫)

毛皮を着たヴィーナス (河出文庫)

悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)

悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)

 サドマゾの黄金コンビ。サドは『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』もおすすめ。
ファウスト〈1〉 (新潮文庫)

ファウスト〈1〉 (新潮文庫)

 メフィストフェレスのセリフがかっこういい。そして有名なあの一言。「時よとどまれ、お前は美しい」→感想
重力の虹〈1〉 (文学の冒険シリーズ)

重力の虹〈1〉 (文学の冒険シリーズ)

 長らく絶版だったが、今年めでたく復活。ピンチョン全小説の中でも、これは買いたい。
闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

 人が自ら行こうとはしない「一線」の向こうに消えた話。→感想
夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

 すべてを否定しながら、彼もまた一線の向こうに消えた。『闇の奥』よりは『夜の果てへの旅』の方が好き。→感想
閉ざされた城の中で語る英吉利人 (中公文庫)

閉ざされた城の中で語る英吉利人 (中公文庫)

 タコプレイに氷柱プレイなど、あまりのあれ加減にマンディアルグが偽名で出した本だが、まあばれますよね。
ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

 イスラム全盛期の中にありながら「天国の幻影にだまされるな」と喝破した賢人。ボルヘスペソアなども彼を愛した。→感想
頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

 ずれこんでいく会話、ずれこんでいく心。このナンセンスさは好きだな。
レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 死者と待ち合わせをして、きちんとごはんを食べ、別れてゆく。すごく好き。→感想
島とクジラと女をめぐる断片

島とクジラと女をめぐる断片

 ボトルメールのような静かで美しい文章。「旅はすべて偶然だ。船の名前は<<紺碧のひびき>>」→感想
夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)

夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)

 アチャスアチャス! ばあちゃんは十字架を薪にくべて絶叫、じいちゃんは斧持って孫の頭を割りにやってくる話。→感想
可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

 恋愛依存症の女性。チェーホフはこれを皮肉のつもりで書いたのだろうか?
ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 最初の3行で「この変態が!」と思わずののしりたくなる、海外文学の金字塔。「我が腰の炎」なのにこの切なさといったら!→感想
 「借りちゃった テント、あ テント、あ テント、借りちゃった テント、あ テント、あ テント!」風呂で歌うと楽しい。
脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

 「脂肪の塊」という源氏名がまかりとおることにびっくりした。→感想
神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)

 「煉獄篇」で登場してきた時の、ベアトリーチェのどSぶりがすごい。この門をくぐる者は一切の望みを捨てよ!
伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

 バベルの図書館をさまよいたいとわりと本気で思っている、残念なふくろうです。→感想
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 「二重思考」の元ネタ。「戦争は平和である 自由は屈従である 無知は力である」→感想
ハムレット (新潮文庫)

ハムレット (新潮文庫)

 「あとは沈黙」は、ハムレット王子最期の言葉。原文は「The rest is silence」。読めば読むほど印象を増す傑作。→感想