キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

色で読む海外文学・モノクローム編

 先日の「色で読む海外文学」リストの続編。Twitterでつぶやいたら、いろいろな方からいっぱい推薦をもらったのでまとめてみることにした。白黒つけてみる? モノクローム編。


White

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)

 冬になると、カナダの離島には流氷がやってくる。見渡す限りの氷原を、犬を引き連れて歩いた記憶。息まで凍りそうな、真っ白な世界にたたずむ自分を幻視した。⇒感想
白い城

白い城

 文明が衝突するイスタンブールで、西洋人と東洋人、2人の男が出会ったら。鏡を見ているようなそっくりの姿なものだから、2人は互いに憎悪し、嫉妬し、愛を注ぐ。自分ではない他人に固執する、腐れ縁の恋仲ってこんな感じかもしれない。⇒感想
狼たちの月

狼たちの月

 人としての生の極北を描いた作品。人のぬくもりも暖かい家もとうに失った。逃げるか死ぬか、選択肢はそれだけ。目の前が真っ白になるほどの孤独に打ちのめされる。⇒感想

白鯨 上 (岩波文庫)

白鯨 上 (岩波文庫)

 勝てないと分かっているものに対して、全身全霊をかけて立ち向かう。それが人間というものか? 「お前がいる限り、自分は自分になれない」、だから片足の狂人は海原を疾走し、木っ端みじんに撃沈する。⇒感想
白の闇 新装版

白の闇 新装版

 人は、情報の7割ほどを視覚から取得しているという。では、突然目の前がまっ白になる奇病が流行したら? 見ることができない恐怖×何をしても誰にも見られない安堵=人が中身をさらけ出す壮絶さ。⇒感想
ミスター・ピップ (EXLIBRIS)

ミスター・ピップ (EXLIBRIS)

 「私たちは、白い色はアイスクリーム、アスピリン、髪に結ぶリボン、そして月や星などすべての重要なものの色だ、と信じながら育った」。@ishiichikoさんからの推薦。


Grey

島暮らしの記録

島暮らしの記録

 灰色の空、ごつごつした岩に立つ小屋。ここで3人の女たちは暮らした。彼らの生活、ヤンソンとトゥーリッキの関係、静かさと厳しさ、何もかもに憧憬してやまない。 ⇒感想
終わりと始まり

終わりと始まり

 「戦争が終わるたびに誰かが後片付けをしなければならない。物事がひとりでに片づいてくれるわけではないのだから」。ただそこに破壊があり、ただそこに悲しみがあり。どこまでも静かで重い言葉の群れ。⇒感想
死者の軍隊の将軍 (東欧の想像力)

死者の軍隊の将軍 (東欧の想像力)

 死者を探して英雄になろうと思ったら、生きながらにして死者の仲間入りをしてしまった、哀れな将軍の物語。生きるということは、ただ呼吸をするだけではない。死者に共感してしまったらすでにその人は、片足を冥府に踏み入れたことになるのだ。@manager_hさんからの推薦。 ⇒感想

灰と土

灰と土

 奴らがやってきて、そして村は灰燼に帰した。戦争に巻き込まれ、放置された人々の混乱。⇒感想
ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)

ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)

 イングランド東部の水郷を舞台にした物語。@mikechatoranさんからの推薦。泥炭(ピート)の色からの連想とのこと。


Black

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

 誰もが何かしらの形で「こんな世界にはうんざりだ」と思っていて、だからこそ好きなことやうれしいことで人は世界を一瞬だけ許容する。だが、一切の許容を排除し、正義も友情も情愛も希望も、すべてを否定するとしたら? 人生の白地図をひたすら真っ黒に塗りつぶしながら歩く男の物語。吐きそう。 ⇒感想
黒い時計の旅 (白水uブックス)

黒い時計の旅 (白水uブックス)

 ボルヘスが論理で世界を構築する錬金術師なら、エリクソンは人の思いと幻想のみで世界を構築する魔術師だと思う。わたしたちの20世紀と、ヒトラーが生き続けるもうひとつの20世紀が、ぐるぐる回って溶ける。 ⇒感想
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

 生涯、一番最初に読んだポーが「黒猫」だった。当時の私は、黒猫より酒に酔い狂った大人が怖いと思った。猫に二重の意味で心臓をつぶされた男。さよなら。
夜の魂―天文学逍遥 (プラネタリー・クラシクス)

夜の魂―天文学逍遥 (プラネタリー・クラシクス)

 「夜空を観察する技術は、50%が視覚の問題で50%が想像力の問題である」。四季を感じながら、星のめぐりに心躍らせるエッセイ。語り口がすばらしい。皆、宇宙がきっと好きになる。
巨匠とマルガリータ

巨匠とマルガリータ

 不穏な都市モスクワで、紳士は黒魔術をドカンバキュンぶっ放し、ヒロインは素っ裸で空を飛び、猫は滔々としゃべり出す。何とも愉快痛快な物語。ハッハー!⇒感想
黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

 「こうして彼らが港へと運び、貴重な商品として船に運び込まれた品物こそ、何トンもの象牙であり、パーム油であり、野生動物の毛皮であり、高価な玉石や黒檀であった」。私たちは、どうしてこうもアフリカを知らないのだろう。⇒感想


BlackWhite

ディフェンス

ディフェンス

 最近新しい表紙で出ているけれど、「白黒小説」で取り上げるなら、やはりこちらだろう。超絶技巧を誇る小説家ナボコフが仕掛けた、極上のチェス盤マジック。
アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

 アメリカ南部の幻想郷ヨクナパトーファで起きた、白い血と黒い血が入り乱れる惨劇。決壊しそうで決壊しない、でも最後は崩壊する予感があるから、常に血管はちりちり、脳天はぐらぐら。激烈。 ⇒感想
移民たち (ゼーバルト・コレクション)

移民たち (ゼーバルト・コレクション)

 異郷にやってきた男たちの静かなうめき声と、白黒写真が織りなす記録。記憶をとどめるために人は記録するが、時は無情にも風化させていく。辛辣だが後味は悪くない。
あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2)

あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2)

 膨大な数の本、膨大な文字、膨大な物語を押し潰しながら、プラハも自分もぶっ潰す。はからずも教養を身につけてしまったら、そうするしかないよね。⇒感想
罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

 正義と罪は、白黒つけられるはっきりしたものではない。ロシア青年は、正義のつもりで人を殺し、罪の意識にさいなまれたけれど、結局なんだかんだと幸せだったと思う。今だったら、誰も手を差し伸べてくれない気がする。⇒感想
 オセロゲームの由来ともなったシェイクスピアの戯曲。たくましい黒人男と美しい白人女が結婚した時に悲劇は起きた。「お前が浮気していないという絶対の証拠があるのか?」。人が持つ感情の中で一番強いかもしれないもの、その名は「嫉妬」。@ayazakiさんからの推薦。 ⇒感想
パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

 20年ほど、ピアノがある生活をしていた。ちっともうまくはなかったけれど、ちょっとした時にピアノを弾いていたものだった。真っ白なおかっぱ髪を揺らしながら、ごきげんでピアノを弾いてくれた先生の思い出に。@diphylleiaさんからの推薦。
王への手紙 (上) (岩波少年文庫 574)

王への手紙 (上) (岩波少年文庫 574)

 オランダ、過去50年の児童文学作品の中から1位に選ばれた傑作。「白い盾の黒い騎士」が出て来るそう。@sabaheeさんからの推薦。



 こうやってみると、モノクローム編には極寒地域や東欧がよくノミネートされているように思う。あとは、戦争にまつわる小説か。南米がまったく入っていないのがおもしろい。秋や冬に読みたい文学と重なっているものもけっこうある。
 「Multicolored」は力尽きた……。いつか、追記するやも。