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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『シンベリン』ウィリアム・シェイクスピア

イギリス文学 ☆☆☆ シェイクスピア全集

[シェイクスピア的どたばた]
William Sharekupeare Cymbeline,1610s?

ポステュマス:おれは死ぬのがうれしいのだ、おまえが生きたがる以上にな。
牢番1:まったくな、眠っちまえば歯の痛みなんか感じないからな。


 シェイクスピア『オセロー』で嫉妬を、『ロミオとジュリエット』ですれ違いの悲劇を、『リア王』で妄録した老王を描いた。これらの要素をまるっと1つの鍋にぶち込んで、喜劇要素とハッピーエンドをぱらぱら振りかけて煮込んだら、きっと『シンベリン』ぽいものになるかもしれない。

 シェイクスピア後期の、どたばたロマンス劇。「すれ違いから来る恋人の嫉妬」「生き別れた兄弟の再会」「権力闘争」「外国との戦争」「うっかり仮死」「男装の麗人が大活躍」など、これでもか! というほど「シェイクスピア的要素」が入っている。正直、つめこみすぎではないかと思うぐらいだ。


 あらすじ。ブリテン王シンベリンの娘イモージェンが、幼馴染のポステュマスと結婚する。ところがシンベリンはイモージェンを義理の息子クロートンと結婚させようと思っていた。怒った王はポステュマスを追放し、恋人たちは離ればなれになる。イモージェンはポステュマスの愛を疑わないが、ポステュマスはイモージェンが浮気をしたと勘違いし、彼女を殺すよう下男に命令する。イモージェンは、ポステュマスが自分を疑っていることを知り、下男に「どうぞ殺しなさい」と突きつける。

ポステュマス:……男には悪に傾き気持ちはない、それは、はっきり断言するが、
女の性情だ。たとえば、嘘をつく、これはどう考えても
女だ、おべっかを言う、女だ、人を欺く、女だ、
情欲、淫らな思い、女だ、女だ、復讐心、女だ、
野心、貪欲、さまざまな形をとる虚栄心、侮蔑、
がつがつした物欲、悪口、移り気、その他
ありとあらゆる欠点は、いや、地獄で知られている
すべての悪徳は、半分というより全部、女のものだ。

イモージェン:ごらん、わたしの抜いたこの剣を。これをとって、ひと思いに、この純白の愛の館を、わたしの胸元を、お突きなさい。
遠慮することはない、なかはからよ、入っているのは悲しみだけ。

 『シンベリン』というタイトルだが、シンベリン王は作品中では空気である。最後、すべての謎や勘違いが解けるときにシンベリンは「ああ、この話を聞き終えるのはいつになるのだ!?」と感極まって叫んだ。彼が最も輝いていた(そして私が共感した)瞬間である。
 この話の立役者はなんといっても、イモージェンとポステュマスという2人の主人の間に挟まれ、両者のすれ違いをどうにか直そうとする下男ピザーニオだろう。四大悲劇には、ピザーニオという良心が足りなかった(一番気苦労が絶えない役ではあるが)。
 個人的には、馬鹿さと素直さが同居している、ダメ息子クロートンが印象的だった。「僕はあの女を愛している、そして憎んでいる。あの女は誰よりもすばらしいが、僕を馬鹿にするから」って、なかなか素直に言えないと思うのだよね。


 『オセロー』『ロミオとジュリエット』は、救いもなく破滅まっしぐらだったので、今回はどうにかなってよかったとは思う。しかし、やはりバッドエンドが持つ迫力やすさまじさには欠けるし、話があちこちに飛びすぎな嫌いはある。どうやら共作の疑いもあるらしい。「シェイクスピアにしてはできが悪すぎる」という批判もどうかと思うのだが、確かにいろいろこんがらがる作品ではあった。


シェイクスピア全集


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