ボヘミアの海岸線

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冬に読みたい海外文学20冊

 雨が降ると地面が凍えたように青くなる季節になった。わたしは冬に鍋をするのが好きだが、それ以上にアイスクリームを食べるのが好きだ。寒い冬にあえてもっと寒いことをするのが好きなのである。
 というわけで、寒い土地の冬を描いた海外文学リストである。セレクトのテーマは「冬の厳しさと美しさ」(このテーマで選ぶと、なぜかロシアが入らなかった)。ぬくぬくとした部屋で、スープをすすりながら、のんべんだらりと読みたい(2019年1月更新)。





カナダ、ケープ・ブレトン島の厳冬を描く。透きとおるように寒い、流氷のような世界と、人間の悲哀と誇りが結晶のようにきらめく。本当にどれもよくて参る。



デンマーク文学。掟と抑圧に抗おうとする人たちの物語。冬の終わりのヴィジョンが鮮烈な「ペーターとローサ」のラスト1ページがすさまじいので、まずはこれだけでも読んでほしい。




アメリカのシカゴに住む移民たちの短編集。「冬のショパン」「ファーウェル」で描かれる冬の美しさといったら! 



フィンランド文学。絶海の孤島で、相棒とふたり暮した芸術家の記録。冬がやってきて港が凍るまで、ただ静かに波の音を聞いて暮らす日々。



フィンランド・ラップランド文学。オーロラとともに生きたサーメ人の伝説。彼らにとって、冬と夜は極彩色。



アイルランドのアラン島に居ついた作家のエッセイ。ケルトが息づく土地で過ごす日々。



イタリアのヴェネツィアに滞在したロシア人作家のエッセイ。冬のヴェネツィアは霧に飲まれて、前を歩く人も見えないような、霧の迷宮となる。夢とヴェネツィアの小道がまざってあいまいになって、自分も一緒に溶けていく。須賀敦子好きならきっと好き。



イギリス文学。世界も人間関係も魂もすべてが絶対零度まで冷え切っているのに、世界が破滅するほどに美しい。世界が破滅するまっただなか、氷のアルビノ少女を地の果てまで追いかける、アポカリプスラブの極北。



スペイン文学。頭の中が真っ白に吹きすさぶ圧倒的な孤独について、これよりすごい作品を知らない。



アイルランド文学。ぬくもりを求めて男がひとり青い野を歩く。表題作が絶品。





アイルランド文学。冬になにか読みたいと思ったら、とりあえずトレヴァーを選んでおけばまちがいはない。人のぬくもりを求め、失い、それでもまだなにかを人は求める。




フランス文学。夜に落とした青い宝石、あるいは鉱物のような美しさ。冬と夜には、人が住んでいる証、光を求めたくなる。


owlman.hateblo.jp

アメリカ文学。マイナス50度の土地をひとりと1匹が歩き、火を熾そうとする。絶対に失敗できない状況での心境、自分を信じたい心と罵る心、希望と罵倒と絶望が氷河のようにとぎすまされた文体で広がる。とにかく読んでいて手先が凍る。スープと紅茶を用意してからお読みください。


owlman.hateblo.jp
オーストリア。極寒のオーストリアの僻村で、精神が液体窒素のような男が、孤独の言葉をひとりで吐きまくる。孤独で凍てついた心の呪詛で、読んでいるほうの心も氷漬け。



北欧神話。北欧に住むヴァイキングの先祖が語った、驚異的な冬の世界。彼ら北欧の人々は「太陽がのぼらない永遠の冬」を心底おそれた。



北海道。アイヌの生活を描いた神の歌。「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」――透明な雪の結晶のような言葉の美しさ。



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