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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『トゥルー・ストーリーズ』ポール・オースター

アメリカ文学 ☆☆☆

[嘘のような本当]
Paul Auster True Stories, 2004.

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

「これは実際にあった出来事である。この赤いノートブックに書きつけたほかのすべての物語と同じく、本当の話である」


冗談が好きで、冗談を愛する人が好きである。オースターが描く、嘘のような本当の話を集めたエッセイ集。

偶然を「予定調和だ」と廃した文学に対して、オースターは「偶然がある世界こそが本当だ」と語りかけてくる。『ムーンパレス』で、主人公は自分の血縁の者に運命的に出会うのだが、この流れも、本書を読むと納得する。

日々出会う冗談のような本当のことを、ミステリのように科学的に立証するでもなく、超常現象として説明するでもない。「こんなおもしろいこともあるんですよ、不思議ですよね人生って」というように、そうした偶然を楽しんで愛するその姿勢が好ましい。

私も、日常生活の中で奇妙な偶然のような出来事に出くわすことがある。旅行先でなくしたものが、1ヵ月後に家のポストに入っていたり、または別のなくしものをマンションの砂場から掘り起こしたり。誰も行方を知らないはずの鍵が、炊飯器の上にのっかっていたこともあるし、地球外の船のような動きをする光を見たこともある。いまだにどうしてそうなったのか、さっぱりわからない。そしてあまり説明による納得も必要としていない。(ここらへんが、私が心からの文系たる所以だ)

だけど、人生こういうことも起こりうるのだ、という心構えのようなものはできたように思う。この広い世界、人間の法と定規では、とうてい測りきれないものがある。そんな下地があるせいか、本書は、水を飲むようにごく自然に受け入れられた本だった。
冗談と偶然を愛する人はぜひ。


オースターの著作レビュー:
『ムーン・パレス』
『最後のものたちの国で』


recommend:
『偶然性の音楽』…偶然が招く。
『不死の人』…偶然もしくは必然。