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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『空の青み』ジョルジュ・バタイユ

フランス文学 ☆☆☆☆

[愛と死と]
Georges Bataille Le Bleu du Ciel,

空の青み (河出文庫)

空の青み (河出文庫)

暑かった。額の汗を拭った。すがりつける神を持った人々が羨ましかった。彼らにひきかえ私ときたら・・・・・・もう間もなく「目はただ泣くため」ということになるのだ。


バタイユの作品は、空のイメージに通じている。「目玉の話/マダム・エドワルダ」でも触れたけれど、あらためてそう思う。

自堕落な生活を送る男の恋物語である。彼は「不吉の鳥」と呼ぶ複数の女性たちと関係を持ちながら、その実、一人の女性を崇拝に近い心で愛している。だけど彼女は彼を捨てる。男はますます自分を堕落に追いつめていく。・・・

不思議な本だ。けっこう赤裸々なことが書いてあるわりには、どろどろしていない。主人公は、心から執着する女性ダーティの前でだけ不能になるらしい。その理由を、彼は比喩的な意味で「自分は死体でないと反応しない」と分析してみせる。これだけ見ると「自堕落な変態」と思いそうなものだが、不思議とあまり嫌悪感がわかないのだ。

愛の隣には常に「死」がひそめいている。自身を追いつめるような自堕落な生活に、スペインの戦争。死はいつも身近にある。バタイユの持ち味は、死に対する愛だと思っていたけれど、死と愛はむしろ同義、明確な境界線を持たないように思える。死に近づけば近づくほど、愛情もより深くなっていくらしい。墓場でのラブシーンは、まさにその極限ともいえるか。

硬質なロマンのある作品だと思った。酒におぼれ、倒錯的な性をさらけ出しながらも、むしろ純粋さが際立つ不思議な雰囲気がある。電話が鳴るのを死にそうな気持ちで待ったり、彼女に会うことが想像できなかったり、敵意のこもった幻滅感があり、一人で泣きに行ったり。心が粟立って振り切れる、コントロールのきかない恋心。青くさいといえば青くさい。だけど甘ったるくないところがいい。

空の青さに、無意味に泣きたくなる。こんな陳腐と紙一重の表現を、ここまで美しく描いてみせるのは、さすがバタイユといったところ。不吉であるが、純情である。こういう恋もたぶんある。


ジョルジュ・バタイユの作品レビュー:
「目玉の話/マダム・エドワルダ」


recommend:
硬質なロマン。
ラディゲ『肉体の悪魔』…魔につかれた激情。
>サン・テグジュペリ『夜間飛行』…空と星と。