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『夏の夜の夢』ウィリアム・シェイクスピア

[どうぞ夢を]
William Shakespeare A Midsummer Night's Dream ,1590?
ウィリアム・シェイクスピア小田島雄志訳『夏の夜の夢』白水社、1983年。

つたない芝居でありますが
夢にすぎないものですが


 夏の一夜、森で繰り広げられる、恋と妖精と人間の、つかの間の喜劇。西洋の森の神秘と、夜の幻想と魔法。そしてゆかいな登場人物によって繰り広げられる、明るい物語。

 2009年最初の感想はどれにしようか考えたが、やはりここは初志貫徹でいってみよう。『夏の夜の夢』は、まったくひどく個人的な理由から、愛してやまない作品だ。季節は正反対といってもいいくらいだけど、どうせなら好きな作品から書いてみたいというのが人情だろう。というわけで、正月早々、初夢も見ないうちから、夏の夜の夢について。

 舞台はアテネの森、時は夏至祭の夜。4人の男女と、妖精の王様夫婦が、いたずら妖精パックによる惚れ薬のいたずらのおかげで、しっちゃかめっちゃかになるという、恋愛どたばたストーリーが主軸になっている。
 この妖精パックが、私は大好きだ。シェイクスピアの道化はわりとどれも好きなのだが、パックの明るくあっけらかんとしたキャラクターは、見ていてとても気持ちがいい。あと、四つ巴になった恋愛関係の中で語られる恋愛話もじつにおもしろい。ニンニク食べるなとか、見た目じゃなくて心で見るんだとか、いつの時代も変わらない恋の駆け引きと悩みがある。

 小田島氏の訳は、原文見ると「ずいぶん大胆に訳したなあ」と思うところもあるが、日本語がやわらかく、韻の踏み方がおもしろいのがいい。たとえば「無罪ですよ、愉快ですよ」なんて、ついうっかり使ってみたいくらい。

 さて、締めはパックの最後の口上、この作品の中でもっとも好きなくだりについて。シェイクスピアの「地球座」の世界観がおどけ者から語られる。わたしがもっとも愛する幕引きのひとつだ。

So, good night unto you all.
Give me your hands, if we be friends,
And Robin shall restore amends.

どうぞ皆さま、よい夢を。


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