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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『アメリカの鱒釣り』リチャード・ブローティガン

[鱒釣り]
Richard Brautigan Trout Fishing in America ,1967.

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

 アメリカのあらゆる場所で、なぜか「鱒釣り」がいたり、鱒を釣ったりしている「鱒釣り」小説。

あらすじをあえて言うなら、とりあえずアメリカに鱒がいる、ということだろうか。
いくつもの幻想的な短編が、あらゆる方向からやってきて「アメリカの鱒釣り」を形作る。
たとえばこんな風に。

<アメリカの鱒ちんちくりん>は、わたしの顔を、じっと目で追っていた。その時、二人を隔てる空間は川だった。―見る見るうちに、どんどん川幅は広がっていった。 (<アメリカの鱒ちんちくりん>に関する最終記述)

 「クリーヴランド建造物取壊し会社」もおもしろくて、なんか切ない。小川売り場があって、鱒のいる川がデパートみたいなところで売られている。鱒は川の付属品という、悲しい立ち位置だ。

 この作品は、訳者との相性が良い作品として知られている。訳者の岸本佐知子さんは、本書の訳者である藤本和子さんを「恩人」と絶賛している。藤本さんとブローティガン作品の関係を表しているのは、「注釈」だろう。注釈がここまでユーモラスな翻訳本には、ちょっとお目にかからない。

 いつも読みたいタイプの作家ではないが、ユーモアのある幻想世界に、ふとした折にぷらっと遊びに行きたくなる。


ブローティガンの著作レビュー:
『芝生の復讐』


recommend:
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