読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『宮殿泥棒』イーサン・ケイニン

アメリカ文学 ☆☆

[優等生の物語]
Ethan Canin THE PALACE THIEF ,1994.

宮殿泥棒 (文春文庫)

宮殿泥棒 (文春文庫)

私はそのときたぶん、考えていたのだと思う。わが人生でありえたかもしれないあらゆる人生のなかで、なぜ自分が、いまここで語ったような人生をいきてきたのかを。


 アメリカの超優等生作家が描く、優等生の4つの物語。品行方正で真面目、人生中に判断や道を踏み誤った覚えも特にない。主人公たちは、いわばそうした「優等生」だ。
 普通の小説だったら、彼らはおそらく「モブ」として描写されるだけだろう。はたから見れば、安定していて起伏のない人生のように見えるかもしれないが、そんな彼らにも語る物語がある。

 周囲に置いていかれてしまったせつない父親の話「傷心の町」、判断ミスからずれてずれてしまった教師の話「宮殿泥棒」がおすすめ。優等生は優等生のまま、語られる。ていねいな視線が好ましい良作。

 作者イーサン・ケイニンのことについて。彼はハーバード大の医学部卒業、医師であり作家でもある。作家本人が「ど」のつく優等生。そりゃあ書く優等生もリアルなはずである。


recommend:
丁寧な短編集、アメリカ編。
スティーブン・ミルハウザー『イン・ザ・ペニー・アーケード』・・・職人世界のような小説。
レベッカ・ブラウン『体の贈り物』・・・ホームワーカーとの関係。


優等生から外れた人びと。ビート・ジェネレーション。
チャールズ・ブコウスキー『死をポケットに入れて』・・・飲むわ打つわ。
ウィリアム・バロウズ裸のランチ』・・・ウィリアムテルごっこで妻を射殺した人。