キリキリソテーにうってつけの日

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『文体練習』レイモン・クノー

[文体の博覧会]
Raymond Queneau Exercices de Style 1947.

文体練習

文体練習

文体練習 (レーモン・クノー・コレクション 7)

文体練習 (レーモン・クノー・コレクション 7)


 フランスのシュルレアリスム作家、クノーの文体練習小説。著者が、この本をものすごく楽しそうに書いたんだろうなという情景が、目に浮かぶような本。

 クノーは、文学実験集団「ウリポ」の手本とされた作家だ。ちょっとわき道にそれるが、このウリポは、とにかく翻訳者泣かせの集団である。有名どころでは、ジョルジュ・ペレックなどがいるが、彼はフランス語で最も出現頻度が高い「e」を小説からきれいに消失させた、すさまじい小説『消失』を書いている(当然、未訳)。消失系の小説では、日本でも筒井康隆の『口紅に残像を』などがあるが、これはひらがなが1字ずつ脱落していくので(幽々白書を思い出す人は同世代)『消失』ほど強烈ではない。本書も、これまた翻訳しにくかっただろうな、としみじみ思う。


 内容はいたってシンプルだ。「バスの中でぐちを言う青年がいる。2時間後にその男は連れに、コートにボタンがいるね、と言われる」という、おもしろくもなんともない数行のシーンを、99もの文体で表現する。

 読んでいて、驚くやら感心するやら、大笑いするやらで、他の本ではなかなか得がたい体験ができた。著者にしても訳者にしても、才能を尽くして、馬鹿なことを大真面目にやってのけるこのユーモアがいい。「植物」とかになると、もう何がなにやら。

 遊び心が好きな読書人、凝り性な読書人におすすめ。


クノーの著作レビュー:
『地下鉄のザジ』

recommend:
シュルレアリズム、ウリポ関係。
マット・マドン『コミック文体練習』・・・コミック版の文体練習。
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