キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『モモ』ミヒャエル・エンデ

[忘れたくない女の子]
Michael Ende MOMO 1973.

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))

 モモのことは、何歳になっても忘れたくない。

 ドイツの作家、エンデによる児童文学。「児童文学」と書く時にいつも思うのだが、児童が児童でなくなった時に読んでなお感動があるのが、本当の児童文学なのだと思う。そういう意味で言えば、「モモ」はまさに児童文学中の児童文学だ。

 本書の魅力はいろいろあるけれど、モモが最高にかわいくてかっこういいところから始めよう。ぼろいスカートに大人のコートをずるずるとひきずりながら、円形劇場で暮らす少女という設定がそもそもロマンチック。モモはそれでいて、しっかりとした足取りで、友達と、世界と付き合っている。芯の強い子で、見ていて気持ちがいい。彼女の友達になったら、確かに幸せになりそうだ。

 結果的にモモは世界を救うわけだけど、彼女自身は世界のためというよりは友達のことを思ってやっているのが、なんかいい。よくおとぎ話には世界を救うために行動を起こすなんていうのがあるが、人間いきなり世界のことなんて絶対に考えられないし、考えたら逆に変だ。

 「時間泥棒」に追われる人びとに、自分の姿を見出す人も多いだろう。文明が人の生活を向上させたのは、労苦から自由になるはずだったのに、人は便利になるたびに、時計によりしがみつくようになってしまっている。この本がドイツ本国と、それから日本で特に売れているのは、なんだか示唆的だ。

 とっくに彼女の年を追い越しているけれど、いまだにあこがれる女の子。むしろ追い越したからこそ、ふとした折に彼女に会いたくなる。私は「時間泥棒」に追われずに、人の話をちゃんと聞ける人間になれているだろうか?



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