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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『脂肪の塊・テリエ館』モーパッサン

フランス文学 ☆☆☆

[娼婦たち]
Henri Ren〓 Albert Guy de Maupassant Boule de suif ,1884.  La Maison Tellier, 1881.

脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

 『女の一生』などで著名な、フランスの短篇作家による中篇2篇。

 題名がなかなか強烈だったので、気になってはいたけど、読むことのなかった本。両方とも娼婦の話らしいし、ましてこの名前。少し敬遠していたのだが、繊細な人間描写と、語りのうまさがあった。

「脂肪の塊」:
 「ブール・ド・スイユ=脂肪の塊」、これがそもそも人の呼び名であるところにびっくりする。これは主人公である娼婦の呼び名だが、同時に彼女を蔑んでいるブルジョワ階級のことでもある。
 彼らの、食べるシーンが印象的。ブルジョワは、ブール・ドースイユの持っている食事を食べ尽くし、放蕩し、人の不幸や人そのものを食い物にする。それなのに、彼女を蔑んで、弁当を欠片も分け与えない。なんとなく、「千と千尋の神隠し」の、両親がごちそうを食べながら豚になっていくシーンを思い出した。娼婦は身体が「脂肪の塊」だけど、上品な方々は心が「脂肪の塊」。

「テリエ館」:
 娼婦館の明るい話。ロートレックの絵がにあう感じ。「脂肪の塊」では、娼婦はかわいそうだけど、こちらでは逆に娼婦優位で、男を手玉に取って楽しげな雰囲気。


 印象的なのはやっぱり「脂肪の塊」か。いろいろインパクトが強いこともあるし。どちらもよくできた物語で、安心して読める感がある。それがモーパッサンやO・ヘンリーの短編のいいところでもあるし、飽きるところでもあるのだけれど。


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