読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『神を見た犬』ディーノ・ブッツァーティ

[不安と恐怖の種]
Dino Buzzati IL COLOMBRE E ALTRI RACCONTI , 1966.

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)


 イタリアの幻想作家による短編集。

 ブッツァーティが描くのは、「種」みたいなものだ。ごくごく小さなものなのだけど、それが一度地面に落ちれば、いろいろなものを吸収して成長していく。日常の不安や恐怖も、同じようなものなのだろう。つとめて平和に見えるけれど、小さなことをきっかけとして、じわじわと広がっていく。以下、印象的だったものの一言感想。

「コロンブレ」:
 恐怖のあまりに、人生を棒にふってしまう男の話。もはやすべては遅すぎた。あーあ

「戦の歌」:
 運命は、歌の中に。ブッツァーティらしい茫漠とした雰囲気が出ている。

「七階」
 日常の「まあいいか」という惰性の怖さ。オチは見えているのに、進まざるをえない。妙な引力。

「神を見た犬」:
 一匹の犬の存在で、村の因習が根こそぎ変わる。見られることへの恐怖と、外聞。けっこう日本でもありそうな話。


 きわめて現実的なことを、ちっとも現実的でない世界観で語る。茫漠として、不安な世界と物語は、足元に寄せては返す波のように、じわりと忍んでさらりと引いていく。長篇「タタール人の砂漠」の方が、雰囲気はじっくり味わえるかも。


ブッツァーティの著作レビュー:
『タタール人の砂漠』


recommend:
イタリア幻想文学関係。
ロダーリ『猫とともに去りぬ』・・・かわいくユーモラス。
プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』・・・自然と人間の関係について。