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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『東方綺譚』ユルスナール

フランス文学 ☆☆☆☆

[東洋の青]
Yourcenar Marguerite NOUVELLE ORIENTALES , 1983.

東方綺譚 (白水Uブックス (69))

東方綺譚 (白水Uブックス (69))


 ベルギー生まれのフランスの小説家による、異国情緒短編集。

 この本には、「異国情緒」という言葉がぴったり似合う。中国、ギリシア、バルカン、ヒンズー教、イスラム教、そして日本。いわゆる「西方」から見た「東方」、だけど私たち東洋人も、この「東方」を知らない。実際、日本が舞台で、源氏が主人公の物語もあるのだが、どこか別の国の物語のように感じる。誰もが知っていそうで、誰もが知らない、そんな架空の異国の物語。

 この作品ですばらしいと思うのは、東方の持つ湿気というか、水の気配を含む、青い空気感を描き出しているところだ。まるで、宝石が水底で時折瞬くような、極彩色が揺らめいている雰囲気。文章と、そこに描き出される空気が見事なまでに美しい。
絵画のようで、息を飲む。

 「老絵師の行方」は、だんとつで好きな作品。日本で読むのならば、「源氏の君の最後の恋」もぜひ。
 極上の架空の世界の空気感に、ひたひたと、ひたる。


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