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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『緋文字』ホーソーン

アメリカ文学 東欧文学

[罪を背負い]
Nathaniel Hawthorne THE SCARLET LETTER ,1850.

緋文字 (新潮文庫)

緋文字 (新潮文庫)

 保守的な時代のアメリカでの、背徳に関する物語。

 背徳というからには、倫理がある。この物語の場合の倫理は、「アメリカのプロテスタント的倫理」。17世紀のボストンで、「汝、姦淫するなかれ」の倫理に反して、主人公のひとりであるヘスタは、夫のいない間に子供を生む。

 いまどきなら不倫は別にめずらしい話ではないけれど、この時代のアメリカにあっては、それは背徳の緋文字「A」を背負わせ、社会的制裁を下すほどの大罪だった。ひと昔前のプロテスタントは本当に恐ろしい。

 数少ない登場人物の、濃密な関係の交錯によって物語りは進む。緋文字を背負った女性ヘスター・プリンとその娘・パール。へスターの夫である医師・チリングワースに、町の牧師のアーサー。

 ひとつの「不倫」という事実に対して、それぞれの「罪の意識」は異なっている。他人の目=常識にさらされて恥辱に耐え続けるヘスタ、自分の目=良識に耐えられなかった牧師、全てを分かった上で悪魔的な復讐心を止められない医師。同じ事件の中にいる人々が、こうも違う結末を向かえるのは、当たり前のようでもあり、不思議でもある。

 飾ってある甲冑に、へスターの着ている服に縫いつけられた「A」の文字がゆがんで大きく映るシーンが印象的。登場人物も、全員印象に残った。特に、ヘスターの強靭な精神と、子供「パールちゃん」の小妖精っぷりがすごい。なんだろう、この無邪気さと残酷さの強烈さ。男性諸君はへたれ。残念。

 倫理が人の人生を食らい、人が罪におののくことについて。
 罪はあるものではなく、思うものなんだろうなあ。社会的な鋳型と、それぞれの人間が持つ鋳型、ふたつによって判断されるような。
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