キリキリソテーにうってつけの日

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『体の贈り物』レベッカ・ブラウン

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Rebecca Brown THE GIFTS OF THE BODY ,1994.

体の贈り物 (新潮文庫)

体の贈り物 (新潮文庫)


 アメリカの作家による、エイズ患者とホームケア・ワーカーをめぐる、短篇小説。

 この作品を最初に読んだのは、数年前になる。看護士見習いの友人が、「辛い」と泣きながらも仕事に向かっていて、その心がさっぱり分からない。
そんな時にあらすじにつられて手に取ってみた本だった。初読時は、「思ったより良かった」程度の感想だったと思う。今読み返してみると、ずいぶん違った印象を受けるのは、身近な人間を1人見送ったからかもしれない。病人と健康な人間が向かい合う時には、「死」もまたそこにひっそりと立っているその感覚を思い出す。

 この物語を読んで、「人との距離」というものについて考えた。 ホームケア・ワーカーとエイズ患者は、一緒にいて、話をして、ごはんを食べて、体に触れる。 家族でも恋人でもない関係なのに、この距離感はじつに不思議だ。 近かったり遠かったり、その距離はさまざまで、主人公も他の人びとも、常に距離を意識しながら動いている。

 印象に残ったのは、「汗の贈り物」(ごはんがおいしそう)、「動きの贈り物」(最後がいい)。 一方通行の道の途中で、常に人を見送る立場に立つ人と、何かを残していく死にゆく人と。


 若いうちの「死」は観念的だが、じつはもっと身体的なものなんだろうと思う。日に日に細くなっていくのを見るのは辛いものだ。

 本書は、「贈り物」という題名が、わりと救いになっているんじゃないかなあと。死は、生者になにかを残していけるだろうか?


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